タナカヒロシのすべて
2005年7月13日 渋谷シネ・ラ・セットにて
(2004年:日本:103分:監督 田中誠)
タナカヒロシ、かつら会社に勤める独身32歳。
一軒家に両親と同居して、勤めもあって、周りが結婚しろ、結婚しろ、と言われてもなんとなくいや・・・な「ごく普通の今時の独身30代」
しかし、この映画、淡々としているようで、話は転がり落ちていく、超然としているようで、妙に生活感があって俗っぽい、普通なようで、普通でない顛末、元気なようでころっと亡くなってしまう人・・・というように、○○なんだけど××であるという矛盾が幾層にも重なっています。
会社の人ともあまりなじまず、自分から進んで恋愛もしようとしない(その割にはまわりの女性にもてる)、なんとなく受け身で今が良ければいいやって、ぬるま湯につかっているいい歳した大人って、ちょっと自分を鏡に映されているような気がしないでもないです。
だから、とほほ・・・と笑いながらもそれは、自分の身の回りのことを笑ってる・・・みたいな気がしてくるのです。
笑えるような、笑えないような微妙な境界線。
日本にたくさんいる、タナカさん、ヒロシさん、平凡で面白みのないタナカヒロシさんを、異色の存在で通してきた鳥肌実が演じているというのがこの映画のキー・ポイントです。
普通だけど、こだわりがあって、わがままだけど、そんな強気でもない・・・そんな「頼りにならない平凡な人」を鳥肌実独特の雰囲気保ちながら、のずれっていうのが楽しいです。
お金の問題など結構、シビアで、リアリティあるけれど、ロールキャベツ弁当なんてないし、「人の気持ちがわからないのか?」と迫るたこ焼き屋さんもいない。十分ありえることとありえないことの不思議な融合。
多分、このタナカヒロシさんにイライラじれてしまう人というのは、「タナカヒロシ状態」ではないしっかりした人なんじゃないかなぁ。
あと、タナカヒロシさんに大笑い出来る人も「自分とは全く違うから、それが可笑しい」ってなるのかなぁと。
タナカヒロシさんが気持ち悪いという人も、タナカヒロシを超越しているしっかりした人かも。
私は身につまされました。タナカヒロシさんの顛末。そして平凡なようで非凡なラスト、強引とも言える希望、そんなものに内心「ほっ」とか安心してしまうのでした。
私、女だからタナカヒロコですね。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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