星になった少年 Shining Boy & Little Randy
2005年7月11日 有楽町よみうりホールにて(試写会)
(2005年:日本:113分:監督 河毛俊作)
千葉県にある市原ぞうの国の実話。
もともとは動物プロダクションとしてスタートして象を飼うようになり今は、動物園兼動物プロダクションとしてテレビなどでも紹介されています。
そして園長の坂本小百合さんの息子、哲夢(てつむ)君がタイに象使いの修行に行ったものの、20歳の若さで亡くなるというのも紹介されていました。
原作は母である坂本小百合さんなので、主人公は中学生~20歳までの哲夢(柳楽優弥)ですけれど、視線はあくまでも「母から見た息子」というものです。
ですから、リアルな少年の内面というのはあまり出てきません。借金に苦しみながらも動物プロダクションを作ってたくさんの動物を飼う母(常磐貴子)、ちょっと母の影にかくれているような義父(高橋克美)そして、祖母(倍賞美津子)と哲夢の兄弟姉妹達。そして家族同様の動物たち、ということで、ずばり「家族の絆の映画」です。
哲夢が中学校で、仲間はずれにされていることを知った母は、「私も中学の時いじめにあった。大人になってからもある。ただ私は言わなかっただけ。」と全くとりあわず、さばさばしています。
中学生の哲夢と姉は、やっぱり年頃だから、そんな母をむしろ冷たい、わかってくれないと思う。そして学校になじめず、動物プロダクションにやってきた象との出会いで、タイの象使いの学校に14歳にして入る・・・結構、哲夢君というのは「あまり周りと一緒にはしゃげないタイプ」なんです。
前作『誰も知らない』で、母に見放されて子供たちだけで生活する長兄を演じて賞をとった柳楽優弥というのは、そんな「ひとり離れて黙っている」という雰囲気をとてもはっきり出す人で、そこら辺のキャスティングは上手いです。目の力がとても強い。
タイ、といっても北西部(国境沿いで隣はカンボジア)のチェンマイに、言葉もわからず、一人で象使いの学校に入る哲夢。
いくら象が好きとはいえ、苦労が山積み。
でも、ここで一年半、生活と修行をするあたりは、しっかりタイでロケをして、本物の象たちが働く為にしつけられる・・・という現実を見ます。
言うことを聞かせる為には、優しいだけではだめで、子象を母象から無理矢理ひきはがして子象を調教するのです。
そして象というのは金持ちのもの、働かせて金を儲ける為の象使い、という日本ではありえない現実も描いています。
しかし無事、象使いになって日本に帰っても、タイのやり方が日本では全く通用しない、という壁にぶつかり、家族ともぶつかってしまいます。
やっぱり哲夢にしてみれば、自分は本場で修行してきたんだから、自分が覚えたやり方を通したいというプライドが目覚める。
でも、結局は動物プロダクションは大人の世界。
子供の世界をリアルとかファンタジックに描くというより、母を始め、大人の世界の方に重点を置いて描いているように思います。
哲夢という少年像は、やはり「母から見た息子」なので、ちょっと美化している部分があるのは仕方ないけれど、その分、母としての自分を模索するという面が意外と多かったです。
母を演じた、常磐貴子が、気丈な役をさばさばと演じていました。さばけているのはいいのだけれど、時にナイーブさがわからなくて無神経に投げ出してしまう所があります。
しかし、中学を休学させてタイに象使いの修行に出す、なんて最初は反対するけれど、結局、一人で行かせる・・・というのが、凄い所。
中学生くらいの時から、「やりたいこと」がはっきりしている子供ってそうそういないように思います。
現実味のないただの一時的な憧れや、夢で、大体現実的な大人は相手にしませんね。
周りがするから何となく高校に進学して、なんとなく大学生になっても、何をしたいのかわからず、なんとなく就職して・・・というのが多く、「みんなと同じでそこそこに暮らせばいい。ちょっと贅沢できて楽に暮らせればいい。安定した生活ができればいい。」という一般的な考えは、母としてはもちろんあるけれど、実際タイに行かせる決心をするところは、感心してしまいました。私だったらこんな風に決められるかは自信がないです。祖母に、「あんただって自由にやりたいことやってきたでしょう。」と言われて、母の母が実は強かったのだ。
また義父との関係とか、家族の絆の強さの息苦しさ、みたいなものもきちんと描かれています。
それでも最後のシーンは、伏線が効いていて、とても綺麗なラスト・シーン~エンドクレジットでここが私は一番好きです。
当然と思っていた将来が突然亡くなっても、きちんと受け継がれているとわかることは、安心感がもてるものです。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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