アバウト・ラブ/関於愛(クァンユーアイ)

アバウト・ラブ/関於愛(クァンユーアイ)

2005年9月19日 東京都写真美術館ホールにて

(2004年:日本・中国:102分:監督 下山天、イー・ツーイェン、チャン・イーパイ)

この映画の予告編は随分前に観ていて興味があってやっと公開になりました。

東京、台北、上海・・・3つの都市で、すれちがい、出逢い、別れていく男女のささやかな愛。

3編の共通点は「言葉が通じない」ということで、言葉が通じない事のズレと、でも、積極的に会話をしようと努力して通じる事もあるんですね・・・という共通の色合いがあります。

*東京編:チェン・ボーリン X 伊東美咲(監督 下山天)

今や東京のシンボルになってしまったような渋谷の交差点を始め、渋谷の街ですれ違いながらも、近づいていく画家の女性と漫画家になるために東京に留学している台北の男の子。

最初はちょっとベタなトレンディドラマのような感じで伊東美咲が出てくるのですが、渋谷の街を自転車で走るチェン・ボーリンが出てくると、不思議な外見は全く同じなのに違う言葉、違う文化で異国人である男の子の孤独・・・みたいなものがさわやかに駆け抜けるようです。

写真を撮るのが趣味の女友達が出てきて、中国上海の女の子と台湾のチェン・ボーリン、3人で公園であれこれ話す所がいいです。

女の子は北海道出身だという。でも他の2人は「北海道って何?」

そこで砂場に日本地図を書いて、ここが北海道、ここが東京・・・すると上海の女の子が、ささっと線を足して、ここが上海、そしてここが、台北よ・・・というシーンがとても微笑ましい。「故郷」という発音が出来ない女の子を、あ~だめだめって笑ってしまうチェン・ボーリンが可愛い。

最後はサラリとしていて、監督が自主映画を作っていた頃の気持ちで・・・というようにちょっとつたない感じの映画の作りが可愛らしいです。

*台北編:加瀬亮 X メイビス・ファン(監督 イー・ツーイェン)

『藍色夏恋』の監督さんでした。

でも、東京編に比べると台湾らしさを全く無視して、部屋の中と曇り空の海辺で2人の男女のコミュニケーション食い違いを描きます。

何故か夜中に本棚を作っている女の子。出来た本棚が持ち上がらないので、鉄ちゃんという日本人の男の子を呼び出します。

真夜中の呼び出しに内心わくわく・・・なのですが、どうも2人は言葉が通じない。何故、夜中に本棚なんか作っているの?なんとなくはしゃぎながらも不安を持っているような2人。そして女の子は本棚に漢字で理由を書く。そして鉄はそこに「理解」と一言書く。

加瀬亮とフェイ・ウォンをふっくらさせたような不思議感を持つメイビス・ファンの2人がなんともエロチックでどきどきします。

しかし言葉が通じない事で、また、漢字で通じた事で、少しずつ近寄るような2人。言葉が通じない会話を1シーンでえんえんと撮ったり、結構これは演技なのか、地なのかわからないのですが、2人ともとっても雰囲気があって上手いです。

はしゃぎながら・・・が急にダンスのようになったり、2人のファッション・・・奇妙感がとても面白い。

*上海編:塚本高史 X リー・シャオルー(監督 チャン・イーパイ)

上海に語学留学にやってきた日本人の青年と下宿の女の子のささやかな愛の物語。

ちょっと素敵なお兄さんが気になってしかたない女の子を演じたのは『シュウシュウの季節』で主役を演じたリー・シャオルー。

体の線が細くて、おとなしくて、でも好奇心旺盛で・・・・日本人のお兄さんの周りをちょろちょろするのがかわいい。

なんとなく、わかってあげてよ・・・塚本君、って感じもするのですが、新しくなる上海の風景がとても綺麗。下宿は雑貨屋さんなのですが、そのたたずまいもとても情緒があります。

言葉は、日本語、英語、スペイン語の食い違いを上手く使って、ちょっと切ないラブ・ストーリーになっています。

この映画のパンフレットには、それぞれの2人がそれぞれの国のポストをはさんで立っている写真があるのですが、これがこの映画のテーマのような気がしました。

外国とをつなぐ郵便ポスト。それはメールでも電話でもなく、手紙のポスト。すぐには通じない時間のかかるコミュニケーション。

愛についての深い世界というよりも、アバウトな愛をさらっと描いたようでとてもそれぞれ個性があって楽しめる、アジアの国々の間に立つ壁のような物・・・それが一番よくわかるのは「言葉」なんですが、近いのに遠い2人たち・・・というのが切なくてとても可愛らしいです。

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