無窮動

無窮動

Perpetual Motion/無窮動

2005年11月26日 有楽町朝日ホールにて(第6回東京フィルメックス)

(2005年:中国:90分:監督 ニン・イン)

コンペティション作品

タイトルの無窮動って何でしょう?調べてみました。

音楽の用語で常動曲ともいいます。

「速い動きの同一音型が始めから終わりまで間断なく続く楽曲。無窮動。ペルペトゥウム-モビレ。」

女性監督、ニン・イン監督は、チャレンジャーです。コメントに、「現代の消費社会にはびこっている女性の美的規範を拒否するところから、この映画は始まったのである」って・・・挑戦状です。しかし、それは怒ってというより、冷静に知的に考えた上での挑戦だし、それへの批判も十分受けて立ちますよ、という余裕と自信があります。

裕福な編集者の女性、ニュウニュウは、著名な作家である夫へのメールで、誰かが夫と浮気をしていて、妻への中傷が書いてある事を知る。怒ったニュウニュウは、夫を知っている女性の友人、疑わしい3人を大晦日、家に呼んで、誰が夫の愛人で、自分への中傷をしたのか探ろうとします。

集まったのは・・・

琴琴という美しい女性。しかし、外国人男性と2回結婚、2回離婚、派手な男性遍歴が自慢。

夜太太は、不動産業で成功した金持ち。しかしかなり下品で、口が悪い。

拉拉は、アーティストで成功した女性。進歩的な考えとレズビアンかもしれない雰囲気を持っている。夫の学生時代の友人。

さて、最初にこの4人の為の豪華な料理が作られます。といってもニワトリをしめて、毛をむしって・・・・といった所を強調。

その料理をむさぼるように食べる女性達の食欲。

そしてその後、麻雀をしたり、お茶を飲んだりしながら男性遍歴や、恋愛観、恋愛体験などをとりとめなく話す。

その間もニュウニュウは1人1人の言葉に、「ヒント」を探そうとする。

最初に、訪問した3人の台詞は「御主人は?」であり、なんでいきなり夫の話題か・・・怪しい。

そして、メールに書いてあった事と同じような事を3人とも口にする・・・怪しい。ちょっとしたミステリータッチです。

話はだんだん、暴露に近い話になり、中国の富裕層の人々、そしてほとんどが家の中の撮影・・・・そして、女性に何かしらの妄想を抱いてしまっている男性だったら、勘弁してくれ、と耳をふさぎたくなるような露骨な性欲の暴露。しかし、今は、裕福そうに幸せそうに見える姿の実は苦しい過去の告白、内面の吐露も上手く混じっています。

キリキリとしたシーンばかりか、というと中庭で4人が少女のように縄跳びをしたりして遊んでいます。

最初は無神経で下品、と思った夜太太が、実は、一番、話を聞ける冷静さを持っていたり、拉拉は逆であったり、見た目、第一印象とは、だんだん印象が変わってくる女性達。この4人は、琴琴役だけが、本職の女優で、他は素人だそうですが、その存在感が凄い。

実は、もう1人、女性がいます。それは、ニュウニュウの家の家政婦。何も言わないけれど、何もかも見ている。そんな存在もきちんと出す。

男の猥談は当然の生理だけれども、女はしてはいけない?食欲、性欲、睡眠欲は、男女問わず人間の三大欲望ですよ。

今は、セクハラが厳しくてあまりないのですが、私の若い頃は「女性かくあるべし」のような一方的なセクハラ説教随分受けたものです。なんか、それを思い出すと、ちょっと爽快?

今でも、映画の素人レビューなどで、一見、映画通男性の堅苦しい書き込みが、よくよく読むと「ただ、キレイな女の人が見たい」というスケベ根性だけだったり、「モンゴロイド系アジア人なんか見たくない。白人じゃないと逃避できない(と書きつつ、チャン・ツィイーにはよだれ)」などやっぱりただのスケベでしょ、それを堂々と開き直って、自分は正しい賢人、粋人っていう姿勢が気にくわない私は、ニン・イン監督のかっこよさ、潔さに憧れてしまいます。ちゃんと映画で勝負しているものなぁ。

さて、このニュウニュウの夫の愛人探しは、意外な展開を見せます。そして、新しい建物が建設中の早朝の人気のない道を歩く女性達の姿。

それは、若い人にはまだまだわからない、中年でないとわからない、ある決別を見いだした姿です。

男性だけでなく、男性に対して、身勝手で甘ったれた妄想を抱いている女性も一回は見ておいた方がいいと思いますよ。こういう映画。苦いけれど体にいい薬です。

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