クライング・フィスト
Crying Fist/泣拳
2006年4月18日 新宿武蔵野館にて
(2005年:韓国:120分:監督 リュ・スンワン)
同じ日に続けて、チェ・ミンシクさん主演映画を観てしまいましたが、これがまた違った雰囲気のがっちりした映画でした。
この映画では2人のボクサーが、平行して描かれます。
1人は、40才でかつてはアジア大会の銀メダリストだけれども、事業に失敗、借金を抱えて、街頭で「殴られ屋」になるまで落ち込んでしまった男、カン・テシク(チェ・ミンシク)
貧しい家の青年で、盗みからカツアゲ、とにかく悪いことしかやらない粗暴な青年。盗みに失敗したことから、刑務所に入れられ、その喧嘩の強さと負けん気を買われて、ボクシング部に入る青年、サンファン(リュ・スンホム、監督リュ・スンワンの実弟)
この2人は実在のモデルがいるそうです。殴られ屋のカン・テシクは日本のボクサー、晴留屋明。新宿で実際に殴られ屋をやっていたそうです。
そして青年の方は、韓国で刑務所からプロ・ボクサーになった実在の選手。
この2つの実話を合体させて対決させる、というアイディアがいいです。
後から考えてみれば、最後に対決する2人、最後まで言葉を交わすことはないのです。2人の友情物語にしがちなところ、対決に焦点をしぼった所がいいです。
だから、甘い部分などどちらの人物にもありません。
ひたすら厳しい状況の元にある2人なのですが、その厳しさの違いをじっくりと見せる。どちらが厳しい、どちらが不幸なのではなく、どちらも厳しいのです。その情け容赦ない説明の仕方があってこその最後の対決の迫力。どちらも勝たなければならない、というむき出しの闘志の説得力になるわけです。
また、撮影が90%手持ちカメラで人物を追う。ボクシングのシーンも殴られ屋のシーンもカメラはどんどん人物に迫っていく。
これが、この映画の特徴です。だから、2人のボクサーは手抜きの表情は出来ない。カメラが常に近くにいるなかで、集中したボクシングをするって、撮影の風景を想像しただけで厳しい。
画面はちょっとザラついたような色合いを出しています。風景よりも人物という映画です。それが徹底しているから中途半端さがないのです。
それが観ている方に、ばんばん伝わってきて、迫力。スクリーンで観るとなおさら、迫力。
この映画は吹替えを使わず、ボクシングの猛練習をしたそうですが、若いリュ・スンホムならわかるのですが、40すぎたチェ・ミンシクの体を絞っていく様子、そして試合の時の肌でわかる年齢差。それでも、どちらにとっても勝たなければならない厳しさが、ますます・・・そういう試練にきちんと応えた2人が本当にいいです。実際、ボクシングの試合は、本気で2人戦ったそうで、パンチもキックも傷から出る血も本物だという本物志向。こういう骨太の男の映画は観ていて気持いいです。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
0コメント