雪に願うこと

雪に願うこと

2006年5月24日 新宿テアトルタイムズスクエアにて

(2005年:日本:112分:監督 根岸吉太郎)

第18回東京国際映画祭 グランプリ・監督賞・最優秀男優賞・観客賞受賞)

とても清潔感のある映画です。

北海道、帯広のばんえい競馬の厩舎で働く兄(佐藤浩市)のもとに、東京で事業に失敗した弟(伊勢谷友介)が、戻ってくる、というか逃げてくる。都合のいいときだけ、頼りやがって・・・・こきつかってやる、という兄の元でしぶしぶ厩舎の仕事をする弟。

地道に働くってどういうことか、ということをかなりストレートに描いているのに力みがなく、自然の中で馬と一緒に働く大変さも、暑苦しくなく、さわやかに感じます。冬の寒い北海道の朝、馬たちの体から湯気がもうもうとたっている風景などとても綺麗で説得力があります。

馬たちと一緒に働くのは、大変な肉体労働なのですが、馬への愛情がなければやっていけない仕事の厳しさも、説教くさくなくさりげなく描いています。

かといって、大人のメルヘン、ファンタジーにはなっていない・・・という所が好きです。

あくまでも、現実的な嫌な事から弟は逃げようとしている、そんな弟を一発で殴り倒す兄、迫力。弟、ふっとぶ。

そして冬のばんえい競馬の間だけ、厩舎の賄いをしている晴子(小泉今日子)も、影になり皆を支えるさりげなさがいいです。

弟の伊勢谷友介は神経質そうで、わがままで、プライド高いのに対して、地道に働き、その分粗野な兄、佐藤浩市と対照的で、この2人のタッグはいいですね。

また、厩舎で働く山本浩司演じるテツヲが、ちょっとへらへらしているようで、一番の弟の理解者である・・・そしてささやかな雪玉の願い事をするといった素朴な無欲な明るさを出していました。結構、キーパーソンなんですね。テツヲは。

派手な映画ではなく、地味というか地道な映画で、映画祭で評価されたのは納得です。

地道に働くって大変な事なんですよ。でもそれが出来ない人には仕事なんか出来ないというのを兄弟の価値観の違いから和解にいたる課程を描きながら、監督は声高にではなく、でも自信を持って語っています。

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