デイジー
Daisy
2006年5月19日 六本木 オリベホールにて(試写会)
(2005年:韓国:125分:監督 アンドリュー・ラウ)
映画っていうのは、嘘んこ、作り物の世界ですから・・・というのは去年の東京フィルメックスでグランプリを受賞した『バッシング』の小林政弘監督の言葉なのですが、映画というのは虚像です。
だから、例えば、ミッキーマウスって、ネズミじゃん、って思ってしまうともうミッキーかわいい!ミッキーグッズ欲しい!ディズニーランドでミッキーに会いたい!なんて気持はなくなって、しらけてしまう。いかに客に虚像を嘘とみせないか、というのは映画の宿命のような気がします。
その所がこの映画のポイントかと。
リアリズム全くない作り上げた世界。これ、監督を香港映画をたくさん撮ってきたアンドリュー・ラウにしたというのが一番のポイントだと思うのです。アンドリュー・ラウ監督は、強引とも言えるほど、世界を作り上げる。そこに矛盾や、ありえね~があっても強引に映画という世界を作り上げてしまう。
俳優さんが、チョン・ウソン、チョン・ジヒョン、イ・ソンジェ・・・・という韓国人気映画の俳優さんを持ってきているので、見た目は韓国映画に思えますが、監督、香港、脚本、韓国、音楽、日本の梅林茂・・・・そして全編、オランダロケーション。オランダなのに外国語は英語だったりします。
下手すると、「なに?これ?ありえない~」の世界。
しかし、映画はみせる、みせる・・・あらゆる要素を盛り込んでみせる。そこが楽しかったです。ありえないのだけれども、どうなるの~?と先が読めなくて、観ている私は強引にずるずるひっぱられる状態。
デイジーの花を誰が贈ってくれるのか、わからないチョン・ジヒョンちゃん。日曜日に似顔絵描きのバイトをしている時に出合った同じ韓国人の男性、イ・ソンジェさんが、私を遠くから見つめている人なのかも?しかし、本当は孤独の殺し屋、チョン・ウソンが遠くから見つめているのでした。
そこら辺、『人魚姫』でいうと、王子様がチョン・ジヒョンちゃん、人魚姫がチョン・ウソン、王子が自分を助けてくれたのだと勘違いして恋してしまうお姫様が、イ・ソンジェさんなんですね。
あちこちに真実のヒントはちりばめられているので、観ている私は「早く、気づけ~~~」とか「早く、言っちゃえ~~」なんて思うのは人魚姫の話を読んだ子供の頃を思い出してしまいました。
しかし、甘い恋愛三角関係だけですか、というと後半、追うもの、追われるもの、真実を知ったもの・・・・という関係になり、犯罪、黒社会もの、銃撃戦ばりばりになっていく。それはまるで急降下して落ちていくような快感があるんです。
銃撃戦の美しさ、格好よさというのは、ありえない世界でありますが、ここら辺の呼吸、見せ方なんて上手いですねぇって唸る私。ぐぐぐぅ~。
俳優で言うと、チョン・ウソンは、孤独の影があって香港電影の雰囲気持っているし、チョン・ジヒョンちゃんもはじけるというより、抑えた演技がいい、そして、色々な役をこなせる俳優、・・・私としては『ほえる犬は噛まない』と『アタック・ザ・ガス・ステーション』のイ・ソンジェの控えめな表情がよかったです。
話は、ベタだったり、ロマンチックだったり、アクションあり、波乱にとんでいるけれど、俳優の演技は抑え気味、というのが良かったです。
ミッキー・マウスはネズミじゃん、プルートは、犬のくせにネズミに飼われているんだよ・・・というはすっぱな見方をするか、虚像の世界に我を忘れてのめり込めるか・・・・人それぞれだと思いますが、アンドリュー・ラウ監督は職人ですから、私は後者でした。いい映画だなぁ。
更夜飯店
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