ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男

ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男

Stoned

2006年7月18日 有楽町 よみうりホールにて(試写会)

(2005年:イギリス:103分:監督 スティーブン・ウーリー)

 さて、この映画は、ローリング・ストーンズをよく知っていること、そしてバンドの創始者であるリーダーだったブライアン・ジョーンズを知っているということが大前提としてあります。

知らない人でも、とても納得のいく伝記映画というのもありますが、この映画はそういう映画ではありません。知ってて当たり前でしょう、とば~んと言われてしまうのです。

 私は、全く知らない世界で、しかし映画は知っているもの、として始まって進むので、まるで私は、一作目を観ないでいきなり「2」とか続編を観てしまったような気分になりました。知っている人にはたまらない世界なのだと思います。

 映画はドキュメンタリーではなく、だんだんメンバーから孤立して、バンドに参加せず、田舎の屋敷にこもり、そして1969年27歳で、プールで水死という短い人生だったブライアン・ジョーンズの最後の3週間に焦点をあてています。

 それを見守るのは、屋敷の改装を頼まれた建築屋のフランク。

アンチ・ビートルズとして人気絶頂、アメリカツアーも行っているのに、ドラッグ所持の罪でパスポートがなくアメリカに行けないブライアン・ジョーンズは、もう酒とドラッグと女に溺れ、ぼろぼろ崩壊寸前の狂った王様、みたいです。

事務所からも、メンバーからも見放されつつあるのに、プライドばかり高くて、わがままで、気まぐれで浪費を続けるブライアン・ジョーンズを最初は苦々しく思っていた、フランクですが、だんだんブライアン・ジョーンズの世界にひきずりこまれてしまう。

 プールでの水死は、薬物多量摂取による溺死、とされていたのが、1993年になって、新事実が発覚ということで作られた映画です。

これはローリング・ストーンズの映画ではなく、あくまでもブライアン・ジョーンズの映画です。

若き日のミック・ジャガーやキース・リチャーズも出てきますが、あまり出過ぎるとイメージが壊れるのか、そこら辺は「隠す」といった感じです。

不良と呼ばれた少年がロックで、絶頂をきわめ、酒とドラッグと女に溺れるあたりの描写はえらく刺激的。怖いくらいです。

 しかし、傲慢で、堕落しきったブライアン・ジョーンズの顔に時々、ちら、と影がさす・・・建てられてから900年も経つ、かつてA.Aミルンが住んでいて、『くまのプーさん』を書いたという広大なお屋敷の風景が綺麗。こういう屋敷がいまだに残っているという事が凄いです。

 この映画の監督は、『バック・ビート』のプロデューサーで、『バック・ビート』はビートルズがデビューする前に、脱落したもう1人のメンバーの話でしたが、こういうロックの世界の伝説的な裏話にとても詳しい人なのでしょう。

 ラスト近く、ブライアンが、フランクに「幸せというのは・・・・退屈なんだよ」と言います。

刺激を求めて、求めて・・・・それで自分を苦しめて、また刺激を求めて・・・といった姿が痛々しいです。

ブライアン・ジョーンズが亡くなってからの追悼コンサートで、「ブライアンがいなくなったら、ストーンズはあと1年しかもたないな」という言葉が出てきますが、そのくらい大きな存在の人だったのです。現実は、今でも現役でバリバリやってるストーンズではありますが、まぁ、こういう人たちには色々な影があったのだなぁ、と感慨にふける映画でした。 

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