天狗(原題)
The Forest Ranger(天狗)
2006年10月24日 恵比寿・東京と写真美術館ホールにて(第19回東京国際映画祭)
(2006年:中国:監督 チー・ジエン)
これは、「中国新鋭監督特集」という部門での上映だったのですが、資料がありません。英語版のチラシくらいしか・・・それがあっただけ良かったのですが、IMDBを調べても上映時間はわかりませんが、大体1時間40分くらいだと思います。
ある山奥の村にやってきた天狗という名の青年。森の監視人をやるために来たのですが、家族と一緒に村に来ると村人たちは大歓迎です。
軍隊で足を負傷している天狗ですが、熱心に森の見回りをする。ところが、村の実力者の一家がひそかに森の木を伐採して私腹を肥やしていることを発見して・・・・・当然、森を守る、密漁などを見張るという仕事ですから、そのことを村長さんに相談します。
しかし、実質村を仕切っているのはこの一家であり、その一家に反する者は、村にはいられない・・・という暗黙の了解があり、だんだん、天狗は追い詰めれられていく・・・水を分けてもらえない、その為にコーラを買わなければならない、しかも天狗だけ高い値段で売りつける・・・あんなに歓迎した村人たちからあっという間に村八分。
天狗青年も困るけれど、幼い子供を抱えて水がない状態になってしまう妻もだんだんヒステリーをおこし、もう、滅茶苦茶。
いわゆる「正直者は馬鹿を見る」という事を、ちょっと寓話的に誇張しながら、迫真の映像で観る者を圧倒します。
ホラーより怖いのは、人間の保身に走る狭い意集団意識かもしれません。
強者が弱者を痛めつける、という図式でなく、「それを見て見ぬふりをする人々」の怖さ。特に村長さんは、ひたすら責任逃れをして逃げ回る。
最初は親切な顔をしていた人々が、どんどん保身のために見て見ぬふりをする。または、だんだん村八分に参加するようになる過程が怖い。
天狗を演じた青年のだんだん焦燥してくる顔が迫力。そしてとうとう天狗は、逆襲をする・・・しかし、手を出してしまったらそれは加害者となってしまいますます悪い方向にしか行かない。
中国の映画というのは、こういう非常に残酷な人間のあり方を迫力にストレートに描くものがあります。誰が悪者なのか、ではなく、人間の中に潜む、「知らぬふり」という強力な暴力を迫力の映像でとらえます。何も言わずに虐げられる天狗を遠くから眺めている村民たちの無表情が凄く怖いですね。ホラー映画の気持悪さはないのですが、体の芯から凍りつくような迫力があります。凄い。
ちょっと気になったのは、この映画の日本語字幕。正式公開されたものではないのですが日本語の使い方が明らかにおかしい部分があり、言葉使いも変。これも映画祭のハプニングのひとつかもしれませんね。
更夜飯店
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