ブラック・ダリア

ブラック・ダリア

The Black Dahlia

2006年11月14日 TOHOシネマズ市川コルトンプラザにて

(2006年:アメリカ:121分:監督 ブライアン・デ・パルマ)

 1940年代アメリカ、、ロサンジェルス。戦後すぐ世間を驚愕させた実際あった事件を元に、書かれたジェームス・エルロイの原作。

私はこの原作は未読なのですが、この映画の「ハードボイルドな雰囲気」がとても好きです。

 私がハードボイルド小説を読むようになったきっかけは、内藤陳さんの本『読まずに死ねるか!』です。

陳師匠は、「ハードボイルドだど」のフレーズで有名なのですが、本当にハードボイルドや冒険小説、スパイ小説が大好きで、大変深い読み手、そしてその興奮が伝わってくるような軽妙な本についての文章・・・読むと本当に読まずにいられない、という私が尊敬する読み手です。

こういう、映画の観客になり、そして感想が書ければいいな、と思うのですが、そこまでの芸は私にはないですね。

さて、そこで出会ったハードボイルド小説、ギャビン・ライアルの『深夜プラス1』などは、じっくりとした文章で、なかなか事件自体は進まなかったりします。

 この映画はまさに、そういった昔のアメリカのハードボイルド小説の世界を映像化したノワール・フィルム、という点がとても気に入っています。

猟奇的な殺人事件。ボクシングで戦ったことのある、2人の刑事、リー(アーロン・エッカート)とバッキー(ジョシュ・ハートネット)

リーはケイ(スカーレット・ヨハンソン)という恋人がいて3人はとても仲がいい。しかし、リーは妙にこのブラック・ダリア事件に深入りをする。

そして殺された、エリザベス・ショートという女性とそっくりな女性が、バッキーに近づいてくる。ハリウッド成金の娘、マデリン(ヒラリー・スワンク)

主人公とも言えるのが、バッキーことジョシュ・ハートネットなのですが、周りの人々はどうもすっきりと正直に話してくれない。

特に2人の女性、ケイとマデリンは、なにかありそうなんだけれども、バッキーを振り回す。どうにも思わせぶりな女たちですな。

でも、この、「なにかありそうなんだけど、なにもいわない」話の遅い進み方というのがいいのですよ。

こういう女性は、ハードボイルド小説には欠かせないキャラクターかもしれません。謎の鍵を握る魅力的な女。

 ジョシュ・ハートネットは、父がドイツ人で・・・といったこともあって、戦争から逃れてきた人々なのでしょう。

育ちがいい、というより這い上がって生き延びてきた、という線の太い演技がよかったですね。

ボクシングをやり、タキシードがよく似合ういい体格。いつもタバコを吸って、ソフト帽がよく似合う。

昔の服装が綺麗に着こなせる人、好きなんですよね。

そういう意味ではジョシュ・ハートネットは、いいキャスティングだったと思います。

 また、昔はヒッチコック映画が大好きで、ミステリ映画をよく作っていたデ・パルマ監督らしい、影の使い方、ゆっくりとなめるように動くカメラ、落ち着いた色合い、部屋の照明、ランプの美しさ。

映像の落ち着きと美しさの中で悲しい事件がおきるのを、追う男。いいですね、ハードボイルド・・・

 今時のスピーディな映画に慣れて、麻痺している人にはなんとも歯がゆいテンポかもしれませんが、この映画を楽しむためにはまず、アメリカの40~50年代の渋いハードボイルド小説を読んで慣れてから、観ることをおすすめします。

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更夜飯店

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