カンダハール
Safar e Ghandehar/Kandahar
2006年12月23日 DVD
(2001年:イラン:85分:監督 モフセン・マフマルバフ)
モフセン・マフマルバフ監督の映画は東京フィルメックスでは去年『セックスと哲学』、今年は『スクリーム・オブ・アント』と観たのですが、どうも公開にはなりそうもありません。
確かに商業ベースには乗らない映画ではあるのですが、もったいない話だと思います。
この『カンダハール』は、撮影直後に9.11テロが起きた事、そしてそのテロリストの拠点地と言われたのがアフガニスタンのカンダハールだったという話題性があった為か、公開されており、DVDでも観る事が出来ました。これが良い事なのか、悲しむべき事なのか、私にはなんとも言えません。気持複雑です。テロ事件がなかったら公開されなかった可能性もある映画だから。
映画は、カナダ在住のアフガニスタン人の女性が、まだアフガニスタンに残っている妹の手紙を受け取った事から、妹を救おうとアフガニスタンのカンダハールを目指すロードムービーです。
妹の手紙には、絶望と、「次の日食の日に私は自殺する」という事が綴られており、たまたま海外へ脱出できた女性は、危険をおかしてアフガニスタン入りをする。
そこで出合う人々や、子どもたち。
また地雷で足をなくした人々が集まる赤十字のキャンプでは、周りに出てくる男の人全て松葉杖という強烈な絵です。
そして女性は頭からすっぽりとかぶり、顔が見えないようにするブルカという衣装を着る。
女性もブルカを着る事になりますが、ブルカ越しに見る風景・・・そして刻々と迫る期限を示す太陽。ブルカ越しに見える世界はとても狭い。
そしてアフガンの人はよく歩く。歩くが故に地雷の被害も多いのだな・・・と思います。
これはあくまでもストーリー映画で、ドキュメンタリーではないのですが、映し出される映像が、ドキュメンタリーのような迫り方をしても、安定した美しさときちんとした構図で決められているという、撮影は危険で大変だったと思うのですが、マフマルバフ監督は映像と音・・・そして様々なブルカの色でもって、アフガニスタンの人々を映し私たちに提示してみせる。
空からパラシュートで降ってくるもの。松葉杖で疾走する片足の男達。頭を前後に激しく振りながらコーランを暗唱する男の子たち。結婚式の行列の色鮮やかなブルカの群衆は観る者を圧倒します。
映像は、何を映してもいいのか、というと、やはりそれなりに、きちんとした「構図」がないと、と思いました。
アフガンの悲惨な実態を訴える、というより美しい構図とクリアな音でもって構成された美しく、そして哀しい映画です。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
0コメント