インランド・エンパイア
Inland Empire
2007年8月16日 新宿ガーデンシネマにて
(2006年:アメリカ=フランス=ポーランド:堂々180分:監督 デヴィット・リンチ)
もし仮に、デヴィット・リンチ監督に「こんな映画作ってあなた、一体何様ですか?」と言ったら、即、「オレサマだっ」と言いそう・・・
それくらい、この映画は、リンチ監督の「オレサマだっ」映画なんですね。
ただ、くどくど言葉で、オレサマだあ、ではなく、監督の脳内から大放出される神経伝達物質としてのドーパミンが、スクリーンから正に大放出の堂々3時間。
これは鑑賞でなく、監督の脳内ドーパミンをあびる体験、または、実験と言えましょう。
すごい、観客を生体実験してしまうのであった・・・リンチ・ドーパミンを浴びた人はどうなるか・・・・・映画の後の観客に興味がありますね。
『マルホランド・ドライブ』と同じく、「インランド・エンパイア」というのも南カルフォルニア州にある地名だそうで、特につながりはないけれど、ドーパミン放出度合いはこちらの方が、すさまじい。
『マルホランド・ドライブ』は、一応、物語があったのに、この映画は物語を放棄しているからです。
ぶぅぅぅぅぅぅん、ずぅぅぅぅぅぅん・・・・・という重低音が響き、ハリウッドの豪邸に住む女優、ローラ・ダーンと映画の中の主婦役をしているローラ・ダーン・・・間にはさまれる映画の元となったポーランド映画の風景、テレビらしい、ウサギ人間たちの会話、次々に現われる不思議な人々の不思議な言葉。
頭で理解しようとする人は大変なことになりそうで、わたしは、もう、物語を追うなんて事は放棄してました。
もう、いくらでも屁理屈はつけられると思うけれど、ドーパミン浴びちゃったわたしは思考が停止状態。
唐突なようで、実はシーンは巧妙にはりめぐされていて、いくつかの世界が見えるのですが、それは同時進行し、時間軸を飛び越え、飛翔するかと思うと内にこもってしまう。
デヴィット・リンチ監督はこの映画について'Woman in trouble'としか言わないそうで、リンチ監督の脳内をぐるぐるまわるローラ・ダーン。
ここまでやれば、完璧・・・といっても何が完璧なのかわからないけれど、もう完璧だと思います。
他に追従を許さないドーパミン映画。立派です。インクレディブルです。
この映画は観ている間より、見終った後の方が、ずずずんと来ます。ふらふらになる不安定さがいつまでも頭に残るのですが、妙にスッキリしたような気分にもなる。
この映画には、物語も謎解きも結末もない。
昔、念写という超能力を使う人をテレビで観たのですが、カメラにむかって手を広げるとその手の中にロンドンのビッグベンの映像が映るんですね。子供の頃に観た中で恐怖の映像でした。
そう、これが、念力者、デヴィット・リンチが、カメラに向かって手をひろげたその中に映る、「何か」なんです。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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