アイ・イン・ザ・スカイ(公開タイトル:天使の眼、野獣の街)

アイ・イン・ザ・スカイ(原題)

Eye In the Sky/Ganchung

2007年11月23日 有楽町 朝日ホールにて(第8回東京フィルメックス)

(2007年:香港:90分:監督 ヤウ・ナイホイ)

コンペティション作品

*第8回東京フィルメックス 審査員特別賞受賞*

 今年は香港映画が多い東京フィルメックスです。

ヤウ・ナイホイ監督は、初監督作品だそうですが、脚本家として、ジョニー・トー監督と仕事をしてきたそうで、『ヒーロー・ネバーダイ』『ザ・ミッション/非情の掟』『暗戦・デッドエンド』『PTU』『エレクション1.2』『柔道龍虎房』・・・と、まぁ、すごい。

 この映画は、警察といっても尾行班・・・制服でなく、私服で怪しい人物を追跡するチームが描かれます。

派手な銃撃戦などないかわりに、香港の街をくまなく映す。

宝石泥棒のレオン・カーフェイが、道を歩いていて、パンすると、その手下、ラム・シューが向かいの道を歩いている。

また、パンすると路上電車から、警察のサイモン・ヤムが降りてくる・・・って一体、どうやってロケしたんでしょうか。

 ジョニー・トー監督は、自分の映画で夜のシーンが多いことについて、香港の街の昼のロケは大変だから・・・と言っていたのですが、この映画は堂々と「映画の登場人物たち」が香港の街を歩き回るのを、遠くのカメラから、なめらかに追っていきます。

もしかして、ゲリラ撮影なの?とか思ってしまいました。

 主人公は、若い女性警察官、ボー(ケイト・ツイ)

まだまだ新人で、尾行について・・・どれだけ観察できるか、どうやって尾行するか、緊急の事態のときはどうするのか・・・をある宝石泥棒の一味を追う形で、先輩捜査官、サイモン・ヤムから学んでいくのです。

 尾行班は、名前をニックネーム・・・動物の名前で言い合う。

ニワトリ、犬頭、ワニ・・・・ボーはというと子豚ちゃん。

尾行には、観察がとても重要で、目を離してはいけない・・・空に目があるように常に見て、記憶していなければならない。

だから、「アイ・イン・ザ・スカイ」なんだ、と教えられる。

 尾行のノウハウというのが、テキパキと語られると同時に、慎重な宝石泥棒、レオン・カーフェイたちの綿密な計画も語られる。

どちらが、先に成功するか・・・尾行追跡か、泥棒か・・・大変、キレのいい映画です。

 シーンのつなぎ目が、暗転するのではなく、さぁ~~とモノクロのストライプになるところなど、とてもスタイリッシュです。

『北北西に進路をとれ』の冒頭のソウル・バスのクレジット・タイトルみたい。

 尾行だから、尾行班から見たら、後姿がとても多い映画ですね。

それも人混みの中の後ろ姿です。

街と後ろ姿の映画といってもいいくらいです。

 まだまだ新人のボーは、やはり緊急事態になって、人命か、追跡か・・・の判断になると人命になってしまうのを、追跡を優先させて、自分の使命を果たしなさい・・・と言われて、悩む。

自分にはむいていないのではないか・・・そんな新人さんを、厳しいけれど暖かく指導するサイモン・ヤム、私服になると妙にお腹が出ていて、普通の人になりきっていますが、いざ、となるとさすが「犬頭」なのですね。

 地味な映画に属するのかもしれませんが、とてもスタイリッシュで、テキパキとした映画の運び方は、ありそうでなかったものがあると思います。恋愛がからんだり、余計な方へは行かない節度がきいています。

 娯楽映画として楽しむも良し、映画の撮影の大胆さに驚くも良し、名優さんたちの演技合戦を楽しむも良し・・・そして何よりもこの映画は、主人公のボーを通じて、若々しい空気が流れているのがいいです。

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更夜飯店

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