カフカ 田舎医者

カフカ 田舎医者

2007年11月23日 シネカノン有楽町二丁目にて

(2007年:日本:50分:監督 山村浩二)

 山村浩二さんのアニメーションは、『頭山』で世界的に評価が高く、今回の新作『カフカ 田舎医者』は21分、で他に『頭山』『年をとった鰐』『校長先生とクジラ』『子どもの形而上学』で合わせて50分くらいでした。

 『カフカ 田舎医者』は、ペン画と色鉛筆のような画材を出しているのですが、色がダーク。

大雪の夜、往診を頼まれた年老いた田舎医者・・・声は、人間国宝、狂言の茂山千作。

他にも、狂言の茂山一家が、声を担当しており、いわゆる、ジャパニーズ・アニメとは、一線を画したアニメーションです。

 雪の中、往診に行く手だてがない、往診したところで・・・と、絶望感を背負いながら雪の中、馬車を走らせる年老いた田舎医者。

病気の少年は、すがりつくように耳もとでつぶやく。「ぼくを死なせてください」

 馬車の為の馬を調達する、という所で一悶着あるのですが、この馬がね。

目が飛び出ててそれが真っ黒で、えらく怖いのです。

アニメーションならではの、デフォルメと、幻想とも妄想ともつかない風景・・・ちょっとびっくりする世界ですね。

カフカの原作にチャレンジする、というのもすごいし、わたしは、理屈でどうのこうの・・・というのはないのですが、アニメーションで描けるものは無限大だ・・・・・と、つぶやくのでした。

 映画もそうなんですけれども、アニメーションというのは一枚一枚、絵を描いていくのです。

その絵の連続から、物語を立ち上げ、その上にまた・・・難しい題材を選ぶというのは、やはり『頭山』で、自信をつけた山村さんの新たなるチャレンジなんでしょうね。

 他にも、何度観ても感心してしまう『頭山』、国本武春さんの三味線と語り口が英語字幕だけになってしまうと、どういう風にとられるのか、わからないのですが、独特のシニカルな語り口。

 切り絵のようなタッチの『年をとった鰐』・・・自分の欲を満たすために、周りのものを食い尽くしてしまう鰐。

子どもの顔が変幻自在に変わっていく『子どもの形而上学』

 こうして並べてみると、共通点もあるけれど、決して同じ手法を繰り返していない、という事に気がつきました。

こういう大人のアニメ、というのは、アニメ大国日本では、逆にありがちなアニメ・・・に観客が殺到する、そんな中ひとり孤高の立場をとり続ける芸術家ですね、山村さんって。

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