テラビシアにかける橋

テラビシアにかける橋

Bridge to Terabithia

2008年2月20日 銀座シネパトスにて

(2007年:アメリカ:95分:監督 ガボア・クスポ)

 最近のハリウッドが作る、ファンタジー映画といえば、特撮に戦闘シーン・・・。

わたしは、ファンタジーには戦いが必要なのか?とすら思ってしまう、懲りに凝ったCGによる戦闘シーンを観る度、思っていました。

この映画は、ナルニア国ものがたりを作ったウォルデン・メディアが製作している・・・という宣伝で、その割には小規模公開なので、いわゆる「ハリウッド ファンタジー映画のちっちゃい版」だと思って観ました。

 しかし、観てみるとこれは、多感な少年・少女の空想物語なんですね。

テラビシア・・・という架空の国に行って、大冒険、戦闘をするわけではない。

 家は貧しくてしかも、上に2人の姉、下に2人の妹に囲まれている小学生の男の子、ジェス。

ジェスは、家にいてもなかなか自分だけの場所がないし、欲しいものも何でも親が買ってくれるわけではない。

ジェスは絵を描くのが好きで、様々な空想の動物の絵を描くのが楽しみなだけです。

 そこに小学校に女の子、レスリーが転校してくる。

レスリーは、他の子と違って、群れを作らず、飄々としている。

そして、作文が得意で、想像力豊か・・・しかも、ジェスの家の隣の家に越してきた。

両親は作家、というだけあって、なかなかの想像力です。

 このジェスとレスリーは、近くの森に、木の上の家を見つける。

そして2人で、想像を膨らませて、テラビシア、という国なんだよ、という遊びをする。

ただのごっこ遊びかというと、そこら辺はちらりちらりと特撮が出てきて、これは、2人の想像力によるものなのか?

でも中心になるのは、2人の学校生活で、なかなかシビアです。

ジェスはなんとなく抑圧された感じのおとなしい子だし、レスリーーは、ちょっとボーイッシュで走る時の姿などカモシカのようです。

 8年生のジャニスという女の子は、いじめっ子。憎たらしいくらいジェスやレスリーをいじめます。

クラスの男の子たちも、ジェスをからかう。子供ならではの残酷さ、というものが出ています。

 でも、レスリーはそんなジャニスに全くかまわず、相手にしない。いいなりにはならない。

むしろ、ジャニスにニセ・ラブレターを書いて困らせよう、なんて言う。

ジェスが怖がると「ラブレターは男の子の汚い字でないとね~」なんてとっても強気でませてもいます。

短距離走では男子を抜いてトップ。小学生くらいの時は、勉強も運動も女の子の方が強かったりするんですよね。

ちょっと変わった服装をしていて、髪は、ピコピコはねているけれども表情豊かです。

 ジェスの妹、メイベルは小学校に入ったばかり。ジェスとレスリーの遊びにはいれてもらえない。

そこら辺もなかなか「子供の掟」ですね。

 特撮が全くないわけではないのですが、非常にかわいらしい、微笑ましいもので、殺し合いの戦闘なんてないのです。

しかし、現実の小学生の悩みだけですか?というと上手く、テラビシア、という想像の国の融合のさせ方なども上手いですね。

 そんなの妄想だよ、と言い切れるかどうか・・・ラストはきちんとしたファンタジーになっていて、嬉しい、楽しいことばかりではなく、つらいこともあるけれど、誰にでもテラビシアは存在する、という抑え方がとてもいいのですね。

ただ、ファンタジーの国に、魔法の国に行ってしまった、ではなくて、自分たちで、作り上げようよ、という考え方。

現代の大人たちが起こしている戦争が、そのまま反映されてしまうようなファンタジー映画での戦闘シーンは、もう、当たり前、になってしまったのでしょうが、殺戮だけの戦いはファンタジックでもないし、魔法とも言えない。

むなしさだけが、眼の前で広がっていく。

この映画は、とても多感な少年少女の個性を大切にする宝物のような映画なのでした。

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