そして、私たちは愛に帰る

そして、私たちは愛に帰る

AFU DER ANDEREN SEITE/THE EDGE OF HEAVEN

2009年1月26日 シネスイッチ銀座にて

(2008年:ドイツ=トルコ:122分:監督 ファティ・アキン)

 ファティ・アキン監督は、『愛より強く』『太陽に恋して』『クロッシング・ザ・ブリッジ』・・・でこの映画と、4本目ですが、めったにない「一目惚れ監督」

何故か、邦題が愛とか恋とかになり、漠然としてますね。

どんな映画か、さっぱりわからないのです。 愛とかつくと、女性客が集まるのかなぁ、そんな安易なことってあるかなぁ。

 トルコ系ドイツ人であるファティ・アキン監督は、4本とも、ドイツとトルコという2つの国にこだわります。

自分のルーツをいつでも捜しているような。

島国日本から想像できない、「地続きで外国がある」という感覚を重視する人です。

 今回は、ドイツはハンブルグではなく、ブレーメン。

トルコはイスタンブール、、、と2つの舞台になります。

冒頭、ブレーメンのにぎやかなパレードがあるかと思うと、労働者デモのシーンになったり、トルコでは、反体制グループの取締騒動だったり・・・背景に政治的なものが色濃くでていますが、丁寧な説明はありません。

 そんな中で、2人の「死」というものが章のタイトルになっています。

この2人はいわゆる脇役・・・なんですね。

しかしこの2人の死により、ドイツに住むトルコ人の父と子、そして母と娘、ドイツ人の母と娘・・・3組の親子が交錯します。

「死」により始まる人探し。でもそれは微妙にすれ違っていく・・・なんか「君の名は」のすれ違いみたいな・・・

でも、時間軸のずらし方、巧妙で、だんだん・・・あ~あの時の・・・っていうことになりますが映画としては、妙に淡々としています。

 起承転結きっちりさせていたのは、『太陽に恋して』で実にわかりやすいドイツからトルコへの旅・・・成長する青年、恋愛の行方を明るくけろり、と描いたものですが、ファティ・アキン監督は「死」というものにとりつかれているようにも思います。

 『愛より強く』の主人公男女は、理由は違っても「自殺」ということから出あうし、今回の映画は、脇役の死・・・で物語が動き出す。

その死というのも、あ・・・・というあまりにもあっけない「死」なので、逆にびっくりします。

物語の動き方が実に堂々としていて、そして、冷静で、暗くも明るくもなく、悲観的でも楽観的でもない、というバランス・・・これが好きですね。

感傷にひきずられることがないのです。

 ドイツで大学教授をしていた主人公は、イスタンブールに行って、ドイツ語専門の本屋さんになる。

この本屋さんがとてもいいんです。

猫がいて、お客さんにチャイを出す。

こんな本屋で働きたい。

 ドイツに住んでトルコに帰りたい、かと思うとトルコにいてドイツに帰りたいという人もいる。

ドイツとトルコ・・・・

そして交錯する3組の親子、人探し・・・きっちりとした「結」をださず、海辺のロングショット・・・

その後を普通描くのでしょうが、海辺のロングショットで、「このあとどうなったか」を観客にゆだねていますね。

 トルコ人の女の子にドイツ人の母親が面会に行くところで意外な言葉がでてきて、おもわず泣いてしまったではないか。

美男美女はでてこないけれど、皆、いい顔してます。

 ファティ・アキン監督は、映画の虚構をよくわかっている・・・けれど、安易な現実逃避にはさせていない。

ファティ・アキン監督に会って、話をしてみたいなぁ、と思いますねぇ。

いや、何を話すのかって・・・うーん、お酒の話とか。

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