ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~

ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~

2009年10月22日 TOHOシネマズ市川コルトンプラザにて

(2009年:日本:112分:監督 根岸吉太郎)

 今年(2009年)は、太宰治の生誕100年だそうで、その企画ってこともあったのか、今の若い人にまた太宰治が人気なのだそうです。

しかし、昔から太宰に心酔する若い人っていました。

 作家の夢枕獏さんは、「志賀直哉のように書き、太宰治のように生き、赤川次郎のように売れたい」・・・などと書かれていますし、

小林信彦さんの自伝的小説『ぼくたちの好きな戦争』で 高校生になった小林さんがすっかり太宰治の虜になってしまう。

そこで、何故、太宰が人気あるのか、、五か条というのがあり、 なるほどねぇ、と思いましたが、 その中のひとつに

・「自分だけ」に語りかけているような錯覚を覚える

 今の若い人に人気なのは、太宰治の文章は話し言葉が多くて、ブログの文章に近いものがあるから親しみやすいのだ、そうです。

へぇ~~~

 わたしは、一応、面白いな、と思って読みましたが、心酔者まではいかなかったです。

太宰治に心酔しきっている人からしたら、多分ですけれど、何をどう映画にしても、違う!と首を振るかもしれません。

この映画に限らず、原作にあまりにも思い入れを持っている人は、映画化などは、どうしても気に入らないのかなぁ、と思いますので、どうでしょうか。

かといって、この映画、太宰治を全く知らない・・・という人には理解しがたいものもあります。

 太宰がモデルの小説家・大谷に浅野忠信。

その妻、サチに松たか子。

 根岸監督は俳優に演技させるっ、という力の入れ方尋常じゃないと思います。

『雪に願うこと』の佐藤浩市と伊勢谷友介の兄弟の憎しみ合いは尋常ではなかったですよ。

思いっきり、弟・友介を張り飛ばして、思いっきりぶっとんでた、あのシーンが・・・ アドリブなんて許さないでしょうねぇ。

この映画では、浅野忠信と松たか子の演技合戦花火炸裂っ!

それが見ごたえありました。

話をしながら、妻、サチが、つらいあまりに涙がじわじわじわじわ出てくる表情をアップで撮る。その涙を隠そうと笑い声をあげる。

太宰治に似ていないのに、どう見ても、これは太宰だ・・・になる浅野くん。

妻は良妻賢母ですが、かといってなんでもかんでもいいなりにはならない気の強さ。

 夫婦は仲が悪いか・・・というと確かにふらふら女と酒におぼれてしまうけれど、それはそれは美しい敬語をきれいにつかった会話をします。

脚本は、田中陽造さんです。

 妻が正しければ正しいほど、小説家である夫のプライドはずたずたに。

妻には頭があがらない・・・・でも、プライドが邪魔をして、 ひねくれて、よじれて、すねて、甘えていく夫。

ただのダメ男とひとことで、ばっさり切れない育ちの良さと品の良さ・・・女を引き寄せる何か・・・をちらりちらりと見せる。

もとはといえば青森の代議士の息子、ですから、いわゆる良家のご子息なわけです。そこらへんは、どんなに「堕落」してみせても、垣間見えてしまう・・・という皮肉。

また小説家として、非常に頭がいい、鋭い・・・「女には幸せも不幸もありません。男には不幸しかありません」などといった会話を交わす夫婦って・・・。

 映像は、俳優さんをきちんと見せる・・・ということを一番に考えていると思います。

それは映画として正しいです。

プロデューサーが亀山千広さんだからでしょうか、そうそう、小難しいひとりよがりの芸術映画にはしていないので、観やすいと言えば観やすいですね。

戦後昭和21年のセットなども、非常に緻密に作り上げています。地味に見えるけれど、力入ってますね。

 いや、すごいなぁ、と思ったのは 大谷に惚れた女給を演じた広末涼子が、気に食わない妻、松たか子に一瞬見せる「私が勝った」笑い。

そして、2歳になる男の子がいますが、熱を出してぐったりしてるときの「子供の眉間のしわ」ですよ。

 映画のあと、おばさま2人が「太宰って自殺しちゃうのよね」と話していました。

いや、心中と自殺はちと、違うかなぁ。 映画『心中天綱島』観たとき、「心中とは自殺ではない」と思いましたが、ではどう違うのか・・・。

平成は心中という言葉がなくなってしまった時代かもしれません。

♪男と女のあい~だには、深くてくら~い河がある~~♪by長谷川きよし。

心中ってその暗い河に身を投げる、または、身を沈めることかなぁ。

うんうん。

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