ディア・ハンター

ディア・ハンター

The Deer Hunter

2009年11月3日 DVDにて

(1978年:アメリカ:176分:監督 マイケル・チミノ)

 最初に、もう、懺悔します。

ごめんなさいっ!!!!

こんな名作映画を30年以上、敬遠していたなんて・・・

本当にごめんなさい。

誰にだか知らないけれど、申し訳ない気持でいっぱいです。

それは、自分自身に・・・なのかもしれません。

 言い訳は嫌いなのですが、なぜ、高校生の時に、公開されて評判になり、知っていたのに・・・観なかったか。

それは、1970年代最後のころにやっと解禁になったアメリカ、ベトナム戦争映画というのは、当時、高校生だったわたしにはとても「怖い映画」だったからです。

特にこの映画は、ロシアン・ルーレット、という言葉が世間に浸透してしまったくらい、衝撃的な社会現象にもなった映画です。ますます、怖い。

そういう理由で、スタンリー・キューブリック監督の『フルメタル・ジャケット』も敬遠してしまったのですが、40代になってDVDで観て衝撃を受けますね。

 これまた、なぜ、この映画のDVDを買ったか・・・というと、それは、この映画でもうひとつ有名になったのが、主題曲のギター曲「カヴァティーナ」です。

音楽はスタンリー・メイヤーズで、ギター演奏をしたのがジョン・ウィリアムス、わたしは、たまたまジョン・ウィリアムスさんの日本公演を観に行って、その生の演奏にいたく感心してしまったからです。

この映画を観た後に、映画に詳しい人と話をしたら「あのとき(公開当時)はあの曲、一色だったね・・・」と言われていました。

聞けば、、、、ああ、この曲ね・・・というスタンダードであります。(ギターとしては大変難度の高い曲)

 さて、この映画、176分。3時間近くあるわけです。

しかし、一瞬たりとも緊張感が途切れない。一気に引き込まれてしまう、大変な力作です。

無駄なシーン、台詞はひとつもない。

 最初のベトナム戦争に行く若者たち3人が、白人ではあっても、いわゆる肉体労働者であり、大きな工場で製鉄の作業をしているシーンから始まります。

3人とは、マイク(ロバート・デ・ニーロ)、ニック(クリストファー・ウォーケン)、スティーブン(ジョン・サベージ)なのですが、スティーブンは結婚式を控えています。

出征祝いと結婚式の披露宴をかねたパーティのシーンが実は、えんえんと続く。

この時わかるのが、音楽で、3人はロシア系移民だ、ということです。それを台詞でなく、音楽と映像でわからせてしまう。

『ゴッド・ファーザー』でも『山猫』でも、披露宴のシーンをえんえんとするのですが、幸せの象徴である結婚式の披露宴。それがどれだけ盛大であるか・・・

『ディア・ハンター』はこれから出征する3人の不安を見事に表しているし、ほかの2本というのは、マフィアであったり、貴族の「権力がどれだけすごいか」を見せつける・・・という意味では少し違うのかもしれません。

 3人の趣味はシカ狩り。特にマイクは名人です。

美しい自然の中で、シカを狩る・・・・・そして、シカをしとめるのは、一発(one shot)で仕留めないとだめだ・・・・といった「伏線」が実に見事に生きている映画(脚本)です。

 この映画、すごいの2番目は、ベトナム戦争のシーンが、こうやって行って、こうなった・・・をすっとばして、いきなり「3人がベトナム兵につかまって捕虜になってしまった」にジャンプするところですね。

そこで、やらされるのが、ロシアン・ルーレット。金が飛び交い、どちらが先にone shotに当たるか、の賭け。

順番にやらされるのですが、それまでは、高床式の家の下の川の水の中に入れられて、生簀の魚のように扱われていて人間扱いなんてされていないですね。

竹の壁の隙間から見えてしまう狂気の遊び。

 ベトナムのシーンは、タイでロケをしていて、かなり本格的です。

1970年代後半は、当時は、まだベトナムではロケはできませんでした。

ベトナム系フランス人である、トライ・アン・ユン監督の『パパイヤの香り』は、ベトナムでロケができなかったから、フランスにベトナムのオールセットを組み立ててしまった・・・という話の時代です。

 一緒に工場で働いていた3人のベトナム戦争のその後は全く違ったものになってしまいます。

特に、ニック(クリストファー・ウォーケン)は、穏やかで、ハンサムで、優しい性格だったのに、ロシアン・ルーレットの狂気にとりつかれてからの変貌、目がすごい。

狂ってる。静かに狂っている・・・・

そして、それをじっと帰ってくるのを待っているのが、ニックの恋人、メリル・ストリープで、初々しくもけなげで、今のメリル様からは想像できない、はかなさ。

 そして、なんとか帰ることができたマイクが、なんとかニックをその狂気から救おう・・・・とします。

その時に、ロバート・デ・ニーロが、クリストファー・ウォーケンに、ひとこと、'I love you.'という・・・・もちろん、男女間の愛してるではありません。

狂気の淵に立った時出た、この言葉の重みは大変なものです。この映画、脚本がいいですね。今の映画は「しゃべりすぎ、説明しすぎ」です。

 「カヴァティーナ」という曲は、オープニングとエンディングのほかに、劇中では3回使われますが、その使うタイミングがまた、すごい。

ここで、ここでっ、ああ、この曲が流れますかっ!という効果絶大です。

 今、この映画を観て、ベトナム戦争をもう、皆、忘れてしまったの?と思う戦争が続いているなぁ、この映画は忘れてはだめだ、と思います。

 この映画でもうひとつ覚えているのは、高校生当時、土曜日に久米宏のラジオ番組で、おすぎが、映画のコーナーを担当していましたが、普段は軽い口調で、楽しい話題なのに、この映画だけは、涙を流して号泣しながら、嗚咽しながら、この映画の良さを訴えていたことです。

淀川長治さんもおすぎも、テレビやラジオのメディアに出るときは、キャラクターみたいな演出をされていたと思うのですが、お二人とも映画評論になると大変厳しい、厳格な映画評論家であること、意外と知られていないのではないかと思います。

 このラジオ番組では、毎週、試写会のプレゼントがありましたが、おすぎが、ぴしり、と

「私、お金がないから、試写券ください、、、、っていうの大嫌い!本当に観たいんだったら、働いて、時間作って、自分で金払って映画を観ろ!!!!」と言ったのが印象に残っています。

 確かにそうですね。今は、映画館でなくても安く映画を観る機会が増えた時代になりましたけれど、わたしも、おすぎに同感。

映画館で映画を観るには、気力、体力、時間、お金が必要で、それをめんどくさい、とか、言う人は、本当にいい映画には出会えない。

高校生のとき、そういう言葉を聞いておいて、良かったなどと・・・・思ってしまいました。

****追記******

映画には関係ないのですが、私は9年ぐらい前にギターを習いに行っていたことがあり、かなり熱心に練習しましたし、お金もかけました。

でも、私には音楽的才能が一切なくて、辞めてしまったのですが、この映画の頃なんですね、って今、2018年思い出しています。今となってはギターは苦い思い出。


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