ペルシャ猫を誰も知らない

ペルシャ猫を誰も知らない

No One Knows About Perisan Cats/Kasi Az Gorbehayeh Irani Khabar Nadareh

2009年11月25日 有楽町朝日ホールにて

(2009年:イラン:106分:監督 バフマン・ゴバティ)

第10回東京フィルメックス コンペティション作品

審査員特別賞受賞

 バフマン・ゴバティ監督は、もう、東京フィルメックスの常連であり、大変な人気者です。

今年も、ゴバティ監督の映画が観られるわ・・・また、あのゴバティ監督が見られるのだわ・・・と楽しみにしていたのですが、今年は来日はできませんでした。

映画の前にメッセージが読まれましたが、この映画は、テヘランで撮影したため、イランで映画を撮ることを禁じられた・・・というショッキングな事実を知りました。

そして、私は音楽が好きで、何か楽器を習いたい・・・とずっと思っているのです・・・という言葉が印象に残りました。

 ゴバティ監督の映画には音楽は欠かせません。

しかし、イスラム教では、音楽というのは厳しい戒律の元にあるのが現状です。

前作『半月』でも、女性がソロで歌うシーンがあったから、イランでは上映禁止ということでした。

陽気な気分や、喜びを感じさせるから・・・音楽は禁止。

日本ではあり得ない現実です。

共産国やイスラム国での映画への干渉というのは、本当にひどいものがあって、そういう現実の中で映画を作り続ける人がいて、その映画を上映する場・・・映画館で公開でなくても、映画祭、という場を作る人がいる・・・東京フィルメックスはそういう映画を上映してくれる数少ない場です。

 この映画では、特に禁止されているいわゆる洋楽(海外のロックやポップス)は禁止されているけれど、アンダーグラウンドでCDやテープを作り、演奏しているバンドがいるのをドキュメンタリータッチで追います。

 冒頭、主人公である2人の男女がメンバーを探すために、地下の隠れスタジオに行くと、スタジオで「う~~~う~~~~う~~~~」と歌っている男の人がいて、「あれね、映画監督。映画作るの禁止されてね・・・・落ち込んでて、ときどき歌いにくるの」

 主人公の2人はギターの男の人と、キーボードの女の人。なんとかバンドをやりたい、とドラムやベースを探すものの・・・・そしてアンダーグラウンドで活躍するバンドやミュージシャンが、演奏、歌うのをドキュメンタリータッチでまるでプロモーションビデオのようにつづっていきます。

 2人はやがて、ヨーロッパで、バンド活動しよう、となりますが、国外に出るのがまた一苦労。

あやしげなところにいって、大金を積まないとパスポートが取れない。

この様子もすごいのですが、同時に飄々としてもいます。

 音楽に国境はない・・・・のかしら、この映画は「ある」と言っていますが、同時に、もう、当然のように海外の音楽は定着している事実も見せます。

普通の主婦のような女の人が、「マドンナっていいわよね」なんて、みんな、知ってるんです。

 若い2人は音楽をやりたい・・・と奔走するけれど、その将来は決して明るくはない。

なんとも言えないやるせなさ・・・の後味を残しますが、それは決して、悪い後味ではないのです。

確かに2人の若者は、夢をあきらめざるをえない・・・・でも、まだまだ、ほかにたくさん、音楽をやりたい、やっている人はいる、ということも同時に力強く描くからです。

もう、ゴバティ監督は、フランスとか行って、好きなだけ音楽映画を作るというのはどうだろう・・・・でも、ゴバティ監督は、イランそしてクルド人ということも同時に捨てはしない、とも思います。

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更夜飯店

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