女王ファナ

女王ファナ

2004/03/24

銀座テアトルシネマ

 

スペインからハプスブルグ家へ政略結婚で嫁いだ女王ファナ。

政略結婚ですから、その裏には政治的なドロドロが渦まく・・・というのがまぁ、普通考えられる

「歴史のお勉強的」な予想。

しかし、この映画はあくまでも一人の女性が一目で魅了された男性を愛して、愛して、愛しぬく・・・という視点に

しぼっているので政治的な部分はあまり描かれなくて、登場人物も限られています。

これがアレクサンドル・デュマの『ダルタニャン物語』とかになると政治的なごたごた、恋愛、友情なんかがもう、

登場人物多数でえんえんとこてこてと続いてしまうわけです。(それはそれで醍醐味があるのですが)

16歳で嫁いで、夫ひとすじのファナに比べて、王フェリペは、フェロモンむんむん精力的。

当然他の女性にも手をつける。

それに対する嫉妬の凄さもあるのですが、出産という女にしか出来ないことでどんどん、女王としての

地位を築いていく姿が痛々しいのはファナ役のピラール・ロペス・デ・アジャラのなんとも細身で線の細い容姿が、

嫉妬の醜さを消しているからだと思います。

演じる役者さんによっては、嫉妬の鬼、狂気の塊になるかと思いますが、「か弱き女性」「母となる女性」という面も

際立たせています。

嫉妬の強さを「狂気」とみなされて女王の座を剥奪されそうになって夫と対立する身になっても、

夫を愛しぬく姿は迫力。

どっちか片方だけををとれば、まだ楽なのでしょうが、それをせずに堂々としていく様子が力強い。

スペイン女王が崩御すると他家に嫁いだとしてもその継承権はあくまでも直系の娘になる、というところが

この悲劇のもとかと思いますが、それがヨーロッパの中世の歴史でもあるわけですね。

なかなか、考えさせられる映画でした。

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