四月

四月

Aprilli

2004年7月3日 渋谷シネアミューズ・イーストにて 1962年グルジア:48分モノクロ:監督 オタール・イオセリアーニ

それまで実験的な短編を作っていたイオセリアーニ監督の初映画監督作品。

これは「抽象的、形式主義的」ということでいきなり上映禁止の憂き目にあってしまいました。(その後監督は冶金工場の精錬工に一時転職してしまう・・・というエピソードつき)

全編モノクロで台詞はなし。かといってサイレントではないんですね。音楽と効果音。若い男女の口げんかのときだけは急に台詞を出しますがあくまでもこれは音であって字幕はないのです。

音楽と人の動作を楽器で効果音のようにつけていてそれがまた、遊び心に満ちていますね。指の動きにギィギィという音、階段を降りる足音に木琴のピコピコという音。

グルジアの街で若い男女が幸せそうに歩いている。2人は結婚したのでしょう、街に出来た新しい綺麗な集合住宅に住むことになりますが・・・最初は何もなくても幸せだった2人の家に家具が、家電製品がところせましとつめこまれると2人の間には不穏な空気が流れ出す・・・というおとぎ話か寓話のようなかわいらしい話です。(この若い2人のしぐさや表情がなんとも可愛らしいのですね)

2人が初めて何もない新しい家に入る・・・わぁ、うれしいね、とキスをすると、あら、電球が灯り、もう一回キスをすると、水道の水が流れ始め、またキスするとガスコンロの火がぱっとつく。

台詞がないから登場人物の名前もわからないし、出てこないのですが、最初少女といっていい女性は白いワンピースを着ています。

生活が物的に「豊か」になってくると、ワンピースは大柄の水玉になりストライプになり・・・白い水玉に黒、黒い水玉に白、縦のストライプに横のストライプとシーンごとに衣装がくるくる変わるところとそのカット割はゴダールみたいですね。

まぁ、確かに、物を捨てることで心の平和が戻ってくるっていうのは、なにか、を示唆しているともとれますねぇ。

しかし、金や物の豊かさより、精神的な豊かさの大切さを描く事が多い監督の第一歩としてとても興味深いですし、映像・・・他の住人達・・・ただひたすら筋肉トレーディングをしている青年、バレエをしている少女、何故か部屋の中でオーケストラをやっているかと思うと、隣の部屋では老人が1人でトランペットを吹いていたり・・・を一編に見せてしまう窓のシーンとかなんともいえないユーモアと奥深さが感じられてよかったのですけど。

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