隠し剣 鬼の爪

隠し剣 鬼の爪

2004年10月25日  イイノホールにて(試写会)

(2004年:日本:131分:監督 山田洋次)

山田洋次監督の時代劇は、『たそがれ清兵衛』でもそうだったのですが、日本の昔は実際はこうだったのだろうというしっかりした時代考証とその反面現代的な家族愛や恋愛が同時に描かれるのだなぁ、と改めて思いました。

派手な殺陣もない、チャンバラもない・・・しかしそこに描かれているのは時代と人間で、今と違う部分と共通する部分の融和のさせ方が自然でとても落ち着いた気分で観られる時代劇です。血湧き肉躍る、というのではないのですね。情緒的なのかな。

時代は幕末。東北の小藩、海坂藩でも西洋の戦闘技術を取り入れようとしている時代。

その流れを底辺にして、生活している人々、そして武士と農民の身分違いの恋・・・を描いています。

主役の片桐役の永瀬正敏は、かつらの不自然を避けるために地毛ですし、体型もそんなに背が高くなく体格も良いとはいえない、農民の出で片桐の家の下女をしているきえ(松たか子)の髪型や着物もすごく地味。言葉も朴訥です。

前半はユーモラスな展開で後半はじっくりとした対決。その対決に出てくるのが秘伝「鬼の爪」であり、道場の仲間だった狭間(小澤征悦)とじわじわと対決するまでの課程が丁寧ですね。

引きの映像が多くて、対決も細かいカット割りでスピード感を出すよりも、長回しで迫力ある肉弾戦をリアリティでもって映しているところが緊張感ありますね。特に永瀬正敏と小澤征悦、本当によくやってます。

真面目なだけでなく、ユーモアがあり、緊張感もあり、地味でもあり、迫力でもあり・・・という実にいい映画でがんす。

脇の吉岡秀隆(義理の弟)、田畑智子(妹)もほのぼのしていていいし、ちょっとだけ出てくる松田洋次のイライラぶりとか緒形拳のぎらぎらしたいやらしさも見所。 

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