明日が来なくても

明日が来なくても

Kal Ho Naa Ho(Tomorrow May Not Be)

2004年11月28日 有楽町朝日ホールにて(第5回東京フィルメックス)

(2003年:インド:186分:監督 ニキル・アドヴァーニー)

インド映画といっても、舞台は現代のニューヨーク。そこに繰り広げられるインド人コミュニティのあれこれを1人の女性と2人の男性の恋模様を中心にきらびやかにお見せします。間に休憩が入る3時間6分という長さ・・・笑って泣いて、笑って泣いて・・・の勢いが緩急上手く使い分けて、ひとときも飽きさせない、そのエンターテイメント精神に脱帽。

これが、1200円という前売料金で見てもったいないと思うくらい、存分にお腹いっぱいに「楽しめる」映画になっているのですね。

まず主人公のナイナ、23歳の女の子のモノローグでてきぱきとこの映画に出てくる人たちが紹介されます。

「ニューヨークの人たちはいつも忙しい、いつも早足で歩く・・・」そんな気ぜわしい街で、レストランを経営する母、頑固にインドのしきたりを守る祖母、弟や妹、金持ちおぼっちゃまの友人、ローヒト、近所の人たち・・・・そしてそこに陽気で人なつこい青年、アマンが隣人としてやってくることから、ぎすぎすしていた家族の気持ちがゆるんでいく。

家族の諍いにうんざりして、消極的で禁欲的な女の子、ナイナですが、アマンの出現によって少しずつ心を開いていくのですが・・・そこにアマンとローヒトの友情が混じり、結果的にはナイナはアマンが好き、ローヒトはナイナが好き、アマンは・・・ちょっと謎。という3角関係になります。

しかし3人が自分の本当に好きな人がわかるまで、が時に歌とダンスを延々とやったり、すれ違いを上手く使ったり・・・特にインド映画、マサラ・ムービーお得意のインド風ダンスをアメリカっぽくして歌い踊る迫力は大したもの。正直言うと見ていてとっても楽しい。

インドのミュージカルというのは、誰にも真似できないような高度な踊りを披露して圧倒するのではなく、道を歩いている人が、子供も年寄りも堂々と、楽しく歌い踊る独特な振り付けですね。きわめてシンプルな振り付けなのですが、とてつもなくたくさんの人が踊り出すとそりゃ~迫力なんです。とても身近に感じるかわいらしさ炸裂。

こういうのはかっこいいだけではダメなんですね。なんとも小憎らしいくらい上手い小物使いや、すれ違い、誤解、を全部、微笑ましい笑いのブレンドでもって見せてくれる。贅沢ですね。会場の観客も大盛り上がりでいい雰囲気でした。

そしてアマンの本当の気持ちがわかってくると、悲恋になるのですが、これもべたべたに泣かせるだけでなく、常にユーモアを持って笑い泣きするような気持ちになってくるわけです。

今のアメリカ映画にはないものを、あえてインド映画勢がニューヨークを舞台にしてしまう、というのは監督は、本当はこういう冒険的なことは出来ないと思ったけれども、プロデューサーの熱意でもって作り上げることが出来た、とコメントしています。

インドの話をインドで作って、インド人が楽しむ・・・・そんな殻を大きく打ち破った意欲作ですよ。

もちろん、インドならではの綺麗なサリーがきんきらきんのダンス・シーンも用意されていて、これは脚本しっかりしていないと、とっても不自然なものになってしまうでしょうが、なんとも自然に綺麗に見せる、人間関係も良いことばかりでなく、悩みや苦しみもきちんと描く・・・それが詰め込みすぎにならないさじ加減、とっても高等技術ですね。監督はまだまだ若い人で、初監督作品なのですが、これからどんどんインドの良さを世界にアピールするような映画、それでいて国に関係ない観客を心豊かにしてくれるような映画を作ってほしいです。

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