阿修羅城の瞳

阿修羅城の瞳

2005年3月18日 有楽町 よみうりホールにて(試写会)

(2005年:日本:119分:監督 滝田洋二郎)

江戸の町には鬼が出る。

阿修羅王は恋をして初めて鬼に転生する。

その時逆しまの天空に阿修羅の城が浮かび上がる。

おおまかな設定とあらすじはこれだけ。それをどれだけの発想力と表現力で表すか?そこが見所です。

劇団☆新幹線の舞台の映画化で、監督は映画『陰陽師』の滝田洋二郎ということで、この作り上げたSFX時代劇、相性よかったのではないかと思います。

起承転結がきちんとしている映画ですね。見せ場をわきまえているというか。

最初に、鬼退治の「鬼御門」の3人(市川染五郎、内藤剛志、渡部篤郎)の暴れぶりが豪快かつ綺麗。

そして・・・五年後、旅役者となった病葉出門(わくばらいずも)(市川染五郎)の歌舞伎役者ぶりもしっかり撮って・・・鬼の王、阿修羅王の復活のきざしを予感させる、尼、美惨(びざん)(樋口可南子)の出現・・・そして運命の痣を持つ女性、つばき(宮沢りえ)と出門の出会い・・・と流れがスムーズです。

SFXばりばり使っていても、疲れず、綺麗・・・という技あり、殺陣の美しさあり、ケレン味もたっぷりです。歌舞伎的な面白さなんです。

そして戯作者、鶴屋南北(小日向文世)の「なにが起きても面白さを追求していく・・」という、何かあると、「おもしろいっ!!!」と登場するタイミングとか楽しいです。

後半は、特撮とSFXと時代劇と歌舞伎が合体して、香港電影の味つけもしました・・・という監督の「どれだけ作り上げた世界でおもしろがられるか」という心意気がバリバリ出てます。

つばき役の宮沢りえは、この役が一番役作りしないでよかった役なんじゃないかと言われた・・・と言っていますが、楚々とした前半、本当の姿に目覚めていく後半と役の巾が広く、また舞台演技的な発声も美しいです。(『父と暮らせば』で実証済みですけど)

こういう歌舞伎、舞台的なものを映像化すると、スピード感が失速したりするのですが、そんなことなくあれよあれよ・・・という展開はなかなか観ていて、歌舞伎の世界を見ているようで楽しいです。

舞台演技が苦手な人はちょっとダメかもしれませんが、舞台の雰囲気を映像で出そうという心意気がわからないと面白さ半減。

市川染五郎は、着流し姿が多いのですが、さすが決まっています。黒の着流し姿なんて、眠狂四郎のようでした。

また身のこなしや、台詞回しも、舞台でも同じ出門役を好演しただけあって、板についているというか自分の役にしてしまっています。他の誰がやっても出来る役ではない、染五郎ならでは・・・という所まで持っていってしまっているのは強みです。

人気芝居役者らしい、お遊び人という風貌と他の人が言ったら、歯が浮いちゃうような台詞を軽々と言ってのける、そのことに感心しました。小指の赤い糸技とかなぁ~楽しいなぁ。

他にも大倉孝二のあわてたときの足の曲がり具合とか、鬼の娘、韓英恵の妖しい無表情とか・・・細かいところも楽しめる娯楽出し物映画ですね。こういう世界、とても好きです。

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