ローレライ

ローレライ

2005年3月9日 松戸サンリオシアターにて

(2004年:日本:128分:監督 樋口真嗣)

本当に小さい頃から何かあると通っていた近所の医院の先生の机の上には潜水艦の精密な模型がありました。

すぐに風邪をひいたり、げろげろ吐いたりする私は、点滴を受けながらその模型をじっと見ていました。

私は模型やプラモデルには興味がなかったのですが、病気のフラフラの時ずっと見ていたのはその潜水艦の模型です。他に見る物がなかったから。

子供心になんだか凄い模型だなぁ~と思っていたのですが、去年○○年ぶりにその医院に行った時、同じ場所にあの潜水艦の模型があってなつかしく思いました。(先生の方は今やもう高齢も高齢で注射する手がブルブルふるえているというスリリングな体験)

この映画はそんな「模型」の世界が大好きで大好きでもうたまらなくて、ちゃちな模型と言われるのが悔しくて仕方ない子供だった人たちがもう、目をつり上げて作りました・・・という模型魂炸裂しています。

原作となった福井晴政の本は好きで他にも今度公開される『亡国のイージズ』など読み応えのあるサスペンスフルで展開が早くて大きい「大作感」漂う世界を持っているのですが、この映画はそんな部分をもう模型という世界でどでかく作りました。

第二次世界大戦、日本終戦直前、謎の潜水艦伊507が、特殊なローレライ・システムを搭載している、という位しか情報のないまま、ある目的で出航します。

それを目論んだのは堤真一扮する大佐であり、指名された艦長は役所広司。

このローレライ・システムという発想がとても現代的またはSF的で、ちょっと驚き、また、出てくる人たちも現代風な感じなのですが、これは戦争というリアリティよりも、潜水艦アドヴェンチャーという方が正しいですね。しかししっかり、反戦のメッセージも盛り込まれていますが声高ではないですね。

伊507が海上に急浮上するときの迫力、潜水艦の中での音響、撮影・・・・潜水艦ものにつきものの男臭さや閉塞感というのは出していません。皆が何があっても冷静で、パニックになるということがあまり緊迫して描かれません。

それよりも、潜水艦の持つ夢のような世界。それをどれだけ精密にスクリーンに映し出すか・・・目的は達せられるのか、といったエンターテイメント精神を模型魂で炸裂させています。そこがとても息苦しくなくて良かったところです。

キャスティングも男臭くない要因のひとつかもしれません。私はピエール瀧のハードな役どころがとても好きなのですが、映画というより舞台の演技に近い堤真一の姿がもうちょっと見たかった・・・。

今、日本映画で若者の代表といえば、この人、妻夫木聡ですけれど、この役に一生懸命です、という感じが出ていてよかったです。変な恋愛だとか、家族への思いだとか、感傷的な部分は押えていますが、最後に全てが解放されるようなエンディングはとてもよかったですよ。

この映画を観ている時、あの病院にあった潜水艦はとても伊507に似ている・・・と思っていました。

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