ナチュラル・シティ

ナチュラル・シティ

Natural City

2005年8月10日 銀座シネパトスにて

(2003年:韓国:114分:監督 ミン・ビョンチョン)

この映画は、単館でひっそりと公開されたのですが、なかなかどうして、近未来SF超大作です。

2080年、ソウルは「メッカ・ライン・シティ」と名前が変わって、アンドロイドと人間が共存する近代都市。

でも、アンドロイドの中に脱走した離脱アンドロイドが犯罪を犯すようになり、その為の特別警察が存在する。

・・・・これって『ブレード・ランナー』みたいなのですが、全体を覆う憂鬱感と世紀末感、滅びの美学みたいなものも同じ匂いがします。

しかし主人公のR(ユ・ジテ)はその特別警察なのに・・・もう、冒頭から生きる望みを捨てている、憂鬱な表情の憂い顔ユ・ジテが、唯一笑顔を見せるのは、アンドロイドのショー・ガール、リアだけ。リアに出来る事は、踊ることだけで、他に何も出来ない。しかも廃棄処分が決まっているところを何とか、再生させようと、それしか生き甲斐がないのかと思うくらい後ろ向きのR。

そして、リアを再生させるために出てくるのが、スラム街の占い師(実は娼婦)のシオン。

Rの不穏な行動に疑問を持つ上司のノマ。

Rとノマを出し抜こうとする強力なアンドロイドのサイパー。

スラム街は、香港の街並みを映してみたりして、また、アンドロイドのサイパーの動きは、香港アクション映画が大好きだという監督らしいワイヤー・アクションで、監督の香港好きが垣間見られるのも嬉しいです。

ユ・ジテという人は背が高い上に、大変足が長いところ、テコンドーの回し蹴りなんかをシャープにやってくれます。

しかしアクションは、テコンドーを基本にしたものなので、香港のそれとはちょっと違う切れ味です。

融合のさせ方が上手い映画です。真似ではなくて融合という感じで、何が違うかと言えば、やはり滅びていくしかない都市と人間の哀しさがずっと続くことです。

影像もダークな映像。小物や仕組みなども凝りに凝っていて、感心してしまいます。

アクションもいいのですけれど、一番印象的なシーンは、Rが密かに裏取引をするシーンの背景に、うぃ~ん、うぃ~んと動いている巨大なファンです。

リアが廃棄される時間はどんどん迫り、Rはますますリアにのめり込んでいく。リア以外、人間の中で、信じられるのは自分だけ、という孤独がリアというアンドロイドでますますくっきり浮かび上がります。

このリアを演じたソ・リンの非人間的な表情が切なく、また、生き延びようとするシオンの生命力と明暗を分けています。

どちらかというと重い映画なのですが、その作り込み方がとても精巧なので、この憂鬱な世界が、今の時代とダブるような気がするのでした。

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