ライフ・オン・ザ・ロングボード

ライフ・オン・ザ・ロングボード

2005年9月28日 渋谷シアターイメージフォーラムにて

(2005年:日本:102分:監督 喜多一郎)

定年退職した父が、急に「サーフィンやる」って言い出したら・・・?

こういう「意外なことにチャレンジする顛末」というのは『Shall We ダンス?』など別に目新しくないのですが、55歳でサーフィンという無謀さがいいです。

娘たち(西村知美と大多月乃)は自分の事に精一杯で、特に次女は就職活動に走り回っても、なかなか決まらないのにひとり傷ついて、「仕事をもうしなくていい父」が何をやろうが、知ったことではないのです。

父、一雄が、決心して種子島に行くとそこは、地元湘南の海とは全く違った大波が押し寄せるサーフィン・ポイントです。

大杉蓮さんが真面目一筋で、定年を迎えても特に大出世をした訳ではない、かといってきちんと一軒家を構えることのできるサラリーマンだった・・・という真面目さが随所に出てきます。

例えば、サーフィンというのはパドリングしていかに早くボードの上に立つか・・・が問題なので、筋肉トレーニングを生真面目にやろうとして、腹筋のあと「ぐぇごぼげぇ」って吐きそうな声を出す所が、本当にやってるのか・・・リアルです。

島の人々もカズオちゃんの真面目さに心を許していくのだと思います。

真面目であることは、会社では必要なんだけれど、ある意味、不器用な真面目さというのは「要領よくない」というマイナスになってしまう会社人間の世界。とにかく不器用な真面目さしかない人が、時間をかけて何かを始めて、変わっていくというのがとてもサバサバっとして観ていて気持ちいいのですね。

サーフィン仲間になる小栗旬が今までの色白の内向的な(神経質で繊細な)少年、青年の役から、真っ黒に日に焼けたサーフィン小僧で今までとは別人のようでした。就職活動に疲れて種子島に来た次女(大多月乃)をまじまじと見て「ホントに親子?」なんてずばっと言う所なんか素朴な兄ちゃん。

一年に一度あるかないかの大波、ポセイドンを前に勝野洋、小栗旬、大杉蓮が並ぶショットなんかは『ビッグ・ウェンズデー』と全く同じなんでちょっと笑ってしましました。

東京のオフィスの描き方などは、ちょっとトレンディドラマみたいで、ああ、オフィスで働いた事がない人が作った世界だなぁ~と思ったり、妙に家族愛をクローズアップさせたり、ここぞとばかりにビーチ・ボーイズの曲が流れたり・・・といったベタだなぁ、と思う部分もありですが、良く言えば、わかりやすいということでもあり、種子島の風景といい、大杉蓮さんの浜辺パドリング練習といい・・・とても微笑ましく、サワヤカな気分になれます。

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