死んでもいい経験

死んでもいい経験

A Moment to Die

2005年9月22日 長岡リリックホールにて((第10回長岡アジア映画祭)

(1988-1995年:韓国:95分:監督 キム・ギヨン)

この映画はずばり女の意地・・・特に「子供を産める女の意地のぶつかりあい」というものかと・・・

しかし、話はミステリータッチで、アルフレッド・ヒッチコック監督の『見知らぬ乗客』にエロイズムを混ぜたような。

結婚しても子供が産まれない為に、離婚させられてしまった若い女性。

子供がいることを盾に、その女性の夫を奪った愛人。

子供を事故で亡くしてしまったことを夫のせいにして、夫を恨んでひたすら若い男と情事にふける中年の女性。

若い女性は愛人が憎い、中年女性は夫が憎い・・・

ひょんなことから、それではお互いの憎い相手を交換殺人しようじゃないか・・・

憎むという気持ちの2人のそれぞれの持ち方が違う。

開き直って自分は絶対に正しいと確信しているのか、または、突然の不幸から発作的に憎しみにかられるか。

前者の方が筋金入り、後者は一時的な発作のようなもの。

しかし、筋金入り(中年女性)の罠にはまってしまった、若い女性は、自分のしなければならないことに気づいた時はもう遅い。

それがとてもスリルとサスペンスにあふれているのですね。

さぁさぁ、あなたの番だ、交換すると言ったでしょう・・・・と迫ってくる中年女性の怖さと、恐怖にかられて動けなくなる若い女性。

もう、「女性の性」ってものを真っ正面から描いてしまっているのですが、話の流れは伏線がとても上手くはられていて、目が離せないのです。

ある意味、正々堂々とした女性映画であり、上出来のミステリ映画です。

また、復讐とはいえ、暗い部屋にベッドだけが明るく浮かび上がるシーンの美しさと透明感。

キム・ギヨン監督というのは資料によると「男を不幸に陥れる女性」というものをずっと追ってきて、この映画は遺作。

1980年代に作られても、すぐには公開されなかった、というのはよくわかる女性の性(さが)ですねぇ。

女は子供を産む道具?いえいえ、男が女に子供を産ませるだけの道具?どうなんでしょう。

しかし映画のトーンは暗いトーンから何故か不思議と明るいトーンに変わっていくのが観ていて、ひきこまれるもうひとつの要因かもしれません。

いやぁ、上手い映画です。 

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