結果

結果

Before Born/結果

2005年11月26日 有楽町朝日ホールにて(第6回東京フィルメックス)

(2005年:中国:104分:監督 チャン・ミン)

コンペティション作品

これは妊娠についての映画です。

しかし、脚本を担当したのが、チン・ハイヤンさんという23歳の女性で、舞台挨拶に出てきた時は、女優さんだと思ったくらい可憐な女の子でびっくりしました。

この映画は、前半と後半、2つの物語に分けられますが、前半の探偵のような男性と後半のその探偵を依頼した男性は、「1人の男」なのかもしれないと思います。

2人の男が探しているのは、ある男なのですが、結局その男は見つからない。その代わりにその男が妊娠させた若い女性が、2人(でも1人?)と同じく、その男を探していて、中国南部の海辺のリゾート・ホテルで出会います。

行動を共にする内に、「みんなが探している男」は、別の若い女性も妊娠させていた・・・・というショッキングな事実も出てきます。

しかし、映画全体のムードは淡い海の色、空と水平線の境目がないような薄い青で彩られ、そこに妊娠の象徴である血の色、赤が混じって、誰も怒ったり、パニックになったり、ヒステリー起こしたり、喧嘩したり・・・という事はなく、静かに「結果」を見届ける事になります。

前半と後半は、役者が違っても、同じ構図、同じ風景、同じ相手の女性・・・というちょっとトリッキーな構成になっていて、あまりめまぐるしく話が展開する訳ではないのですが、ちょっとぼぅっと見ていると訳わからなくなりそうです。

こういうトリッキーな映画手法ってとても好きだし、映画全体を貫く淡い透明感のある色が美しくて、言葉が広東語が混じる・・・ということでちょっと南国風の空気があって、そこはかとないユーモアがあるような、切ないような空気が好きです。

海水浴客がいるので夏なのでしょうが、雨が降ったりすると寒々とした空気になって、暑いのか寒いのかよくわからない海辺の憂鬱感が感覚的に好きです。

妊娠というのは恋愛のある結果かもしれません。この若い脚本家は、周りから祝福される妊娠ではなく、1人内に秘めていなければならない妊娠というものを選びました。その点がとっても興味深いです。

しかし、そこに暗い、陰湿なムードはなく、むしろ妊娠した女性は、1人の男はふるけれど、1人の男からはふられてしまう・・・という皮肉な結果になっても、結構、けろりと事態を受止めているファンタジーのようです。

特に、船である小さな島に行くのですが、そこでの風景はのどかで、人気がなくて海辺の岩場は美しい。岩場の穴に白い石か貝殻を何本か刺している女の子を映し、後半、また島に行くと、岩に刺さった白い石の先が、ほんのり赤くなっている、といった象徴的なイメージ映像の映し方も幻想的で、現実的な事を描いているのに非現実的な雰囲気になっています。

ふわふわとしたような雰囲気の割には、ラストは妙に力強くて、何故か希望が見えるようで・・・はっきりとした希望ではないのですが、雨の中ひとり傘を差した女の子の姿に、逃げる、という気持ちは見られません。そこが気持ちよかったです。

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