ブラザーズ・グリム

ブラザーズ・グリム

The Brothers Grimm

2005年11月9日 ヴァージンTOHOシネマズ市川コルトンプラザにて

(2005年:アメリカ=チェコ:117分:監督 テリー・ギリアム)

ドキュメンタリー映画『ロスト・イン・ラ・マンチャ』は、『ラ・マンチャの男』を映画化しようとして派手に挫折するテリー・ギリアム監督でした。

映画『バロン』には『バトル・オブ・バロン』という幻のメイキング・ビデオがあって、『ほら男爵の冒険』を映画化するテリー・ギリアム監督、大騒ぎの撮影現場・・・メイキングではなく、まさにバトル状態の撮影風景で、この2本を観た私は『ブラザーズ・グリム』がどうのこうのと言う前に今回は撮影終えて公開にこぎつけたのねぇ~、また大騒ぎの現場だったのねぇ~と大変感慨深いものがあります。

随分前に「・・・今度は、グリム童話を映画化するらしいよ」と聞いた時には、「大丈夫ですかねぇ・・・」と言った覚えがあります。

まぁ、良かった、良かった。

グリム童話を映画化するというより、グリム兄弟の冒険の顛末・・・のようなダークで、ファンタジックなコメディです。

だから、ちょっとどころかかなり笑ってしまいました。

兄、ウィル(マット・ディモン)と弟、ジェイコブ(ヒース・レジャー)のグリム兄弟は、伝承民話を集めたことで有名ですが、この映画では、伝承民話を集めているのは弟ジェイコブで、兄弟は何をして収入を得ているかというと、伝承(魔女や悪魔)を聞きつけると、それをでっち上げて退治してみせて善良な住民たちから金を巻き上げているんです。

もう、ここで既存のイメージぶちこわしますっというテリー・ギリアム監督のそっぽの向き方がわかります。

兄弟のでっち上げは、ドイツを占領しているフランスの将軍に見抜かれてしまって、少女行方不明~神隠しの真実を追え、成功しないと死ぬだけだよん、と脅迫されて謎に向かうアドヴェンチャー。

やたら拷問のシーンが出てくるのですが、嬉々として拷問を凝って見せる所なんか、監督本領発揮です。

なんで逆さ吊りの顔にガラスの箱つけて中に虫いっぱい入れるかなぁ~って・・・

『モンティ・パイソン・ホーリー・グレイル』『ジャバー・ウォッキー』とか、中世くらいの時代ものになると本当に嬉しそうに拷問とかやりだす、凝り出す監督。

しかし、赤頭巾の話は出てきませんが、赤い頭巾をかぶった女の子がさらわれる、そんなシーンを盛り込んでみせます。

謎の基本となるのはラプンツェル姫です。高い塔に閉じこめられたラプンツェル姫は髪を長くのばして、それを梯子がわりにして王子が塔に登る・・・というくだりは、弟グリムが、白髪の長い髪につかまって登ろうとして落っこちてしまう・・・といった風に変えられていたりして、また、カエルにキスをすると・・・という話は、カエルにキスっていうより、舐める?で笑ってしまいました。

しかも兄グリムが舐めるとカエルは手の中で腹をみせて、くにくにしたりする・・・可笑しいなぁ、もう。

森が生きていて動く様子他、特撮を駆使しているけれど、マット・ディモンとヒース・レジャーが馬に乗る所なんかはしっかり綺麗に撮っていて、ヒース・レジャーは『ロック・ユー!』『サハラに舞う羽根』など馬に乗れる俳優って事で有名ですが、マット・ディモンもしっかりしていました。

マット・ディモンは、賢い役よりも、『ドグマ』のパーカー天使とか小賢しい役というのが上手いですね。

ヒース・レジャーはヒーロータイプとうってかわって、おろおろと小心者の役で、この2人が喧嘩しながら、協力しながらっていう兄弟ものとしても楽しいです。2人の喧嘩を見ていると本当のリアルな兄弟みたいです。

しかし、とても美しいシーンがあって、それはガラスの靴の所なんですけれど、そこら辺はさらっとちょっとしか見せないのがまた心憎い。

チェコのプラハでロケしていて森や山もヨーロッパの雰囲気、魔女が出そうなダークな雰囲気、そしてモニカ・ベルッチの魔女の出し方・・・・本当に美しい人っていうのは怖いのよという、グリム童話の怖い部分もしっかり把握しています。

だから、あまり子供が楽しく観られる映画ではないかなぁ、と思いますが、それでも今までにくらべればそっぽを向いた子供向けになっています。

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