名前のない森
(私立探偵 濱マイク テレビ特別版Bプログラム:ロング・バージョン)
2006年4月16日 渋谷 シネマ・アンジェリカにて
(2002年:日本:71分:監督 青山真治)
この上映は、テレビで放映された順番通りではなく、この『名前のない森』は、シリーズ半ば頃の放映だったと思いますが、毎回物語は完結するので、特に問題はないのでした。
私が一番、観たかったのはこの青山真治監督編でした。(前に大学か、ホールかで上映されていました)
成金風の男(原田芳雄)から、結納直前になって姿を消してしまった娘を連れ戻して欲しいという依頼を受けたマイク。
娘は山奥の自己開発セミナーの合宿所に行ってしまったらしい。
冒頭の仕事の依頼の部分、原田芳雄のとの所はとてもたくさんカットされていたのですねぇ。
横浜を離れて遠い山の中でのホラーチックな不思議物語。
針葉樹がどこまでも続くような、紅葉の森がとても美しい。 特撮ではなく、自然の森の中の不気味さを綺麗に出しています。
『ブレアウィッチ・プロジェクト』なんてチャチに思えます。
そこでは、’せんせい’と呼ばれる謎の女性(鈴木京香)と自分が何をしたいのか見つけたいという名前は番号で呼ばれるだけの受講者たちが静かに暮らしている・・・ように見えるのですが、マイクが受講者を装って、潜入した世界はどこかおかしい。
表情のない受講者たち。外の世界から隔絶されて、何をするべきかの指示もない。
その合宿所から出る事は、もう二度と戻らない「卒業」を意味する。
青山監督の世界っていつも病んでいる。そして透明。
濱マイクシリーズの中では異色の一編。
妹、茜や他の騒がしい黄金町の友人達は一切出てこない。
鈴木京香は、こういう作り笑顔で迫ってくる雰囲気がよく似合います。
そして、受講者たち、津田寛治、大塚寧々のゆがんだ演技。
マイクは、すぐに依頼人の娘を見つけるけれど、だんだんこの「世界」に魅了されてしまっている自分にも気づいていく。
静かで不気味で、そして透明で。マイクが森で見つけた「自分にそっくりな木」が意味するものは、「知らず知らずのうちに外の世界で病んでいる自分の姿」なのでしょう。
マイクがどんなに反抗しても、それを吸い込んでしまうような鈴木京香のたたずまいが、美しくてとてもホラー。このホラーは怖いです。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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