エコール

エコール

INNOCENCE

2006年11月4日 渋谷 シネマライズにて

(2004年:フランス=ベルギー=イギリス:121分:監督 ルシール・アザリロヴィック)

 深い緑の山奥・・・というのは一種の聖なる秘境としてのイメージが強いのでしょうか。

「外界から隔絶された世界」という意味合いを持つ映画がよく作られます。

この映画も、最初、ごごご・・・という重低音が暗闇に響き、そこには棺。

 その棺の中には裸の少女がいる。そこは森の奥のエコール、学校なのでした。

6歳から12歳までの少女が6つの屋敷(寮)にわかれて住んでいる。ひとつの寮には一学年ずつ、髪のリボンは最年少が赤、最年長が紫。

他にも青、緑、オレンジ・・・といった「リボンの少女たちがバレエを習う」・・・もう下手すると危ない世界ですけれども、意外とこの世界は健康的でおどろおどろしい雰囲気はないのです。

それは、2人の女教師も優しいし、他の女の子も和気あいあいとしたムードが全編を貫いているからで、少女たちは「私たちは危険にさらされている」という危機感が全く見られない一種のユートピアに見えます。

 しかし、どこからともなく、連れて来られた(誘拐された?)少女たちの中には、新参者をいじめたり、家に帰りたがったり、外へ逃げ出そうとする子も出てくる。しかし、外に出ようとした少女に待ち受けているのは死のみです。そして12歳になった少女はどこかへ去っていくのです。

 生徒も女の子ばかり、先生も女、世話をするのも老女ばかり、といった女だけの世界で、幼女が少女へ成長する姿を丁寧に映し出します。

最初連れて来られた、イリスというアジア系の女の子は、紫のリボン・・・最年長のビアンカと仲良くなる。

 夜になると森には古い外灯が、ぼっとつく。ビアンカは、イリスには絶対ついてくるな、と言い、その外灯の下に消えていく。

この森の中に一列に並ぶ外灯の光がなんとも怪しい光で、美しくも恐ろしい雰囲気を持っています。外灯の行く先には、何もないような、真っ暗な不安を描いているようです。

 12歳になった少女たちは、6年間習ってきたバレエを地下に作られた劇場で、「ある人々」に披露しなければならない。バレエを習うのは全てこの舞台のため。蝶の羽根をつけて踊る少女たち。無言で見つめる観客たち。

そして、とうとうビアンカが、外へ出る日がやってきた・・・・そしてそのかわりに新しい女の子が棺で寮に運ばれてくる。

 誰も知らないところで、永遠に繰り返されている儀式、のような映画です。オーストラリア映画『ピクニック・アット・ザ・ハンギングロック』では少女たちは残酷であり、また、美しい少女たちは山へ行ったきり、「神隠し」にあってしまう・・・という残酷さを際立たせた少女もの、だったのですが、この映画はあくまでも、少女の無垢な成長を守る、といった雰囲気が強くて、あまり恐怖感は強調していません。

しかし、やはり少女に異性と接触させず、無垢なままの教育をして理想の少女を作り上げる、というところに誰というわけではないのですが、ゆがんだ大人のエゴイズムが見え隠れするところはやはり、怖い、と思います。

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