アタゴオルは猫の森
2006年11月3日 新宿武蔵野館にて
(2006年:日本:81分:監督 西久保瑞穂)
私が始めて、原作 ますむらひろしの漫画に出合ったのは多分、少年ジャンプ誌の漫画大賞で受賞した『霧にむせぶ夜』だったと思います。
猫たちが出てくる暗いムードの漫画なのですが、猫の毛一本一本きちんと描いているような緻密さが驚きでした。
その後、高校生くらいになって、『アタゴオル玉手箱』に出会います。
この漫画は、もう30年も続いているそうで、最近の若い人よりも、40代くらいの人が、10代くらいの時に読んだ衝撃的な漫画だったと思うのです。
私はますむらひろしのアタゴオルのイラスト本を持っているのですが、「神経旋律」というタイトルの猫たちが楽器を演奏する絵の神経がやっぱり磨り減っているような異様なインパクトがとても強いです。
また、明らかに宮沢賢治の世界をベースにしている、天文や気象といったものに深く関わっている不思議世界、アタゴオル。
切手が鉱石だったり、水晶から黄粉が出てきてそれを吸うと空の雲に変身できるとか・・・この漫画描いてる人、ちょっとアブナイ薬かなんかやってるんじゃない?と聞かれた事があります。
絵は、葉の葉脈をこれまた一本一本丁寧にみちみちと描きこむ異常なほどの懲り方をしています。
また、ストーリーは幻想的でありながら、中心的人物、猫のヒデヨシ・・・・太っていて、食い気ばかりで、「~~なのよお~~」と自分勝手に動き回る、自分の食欲のためには友人なんか簡単に裏切る、しかし、その分、お仕置きを受けても全然懲りない、また、どんな毒と言われるものも受け付けない脅威の生命力の持ち主。歌を歌えばそのあまりの下手さに周りが悶絶してしまう、けれど全く気にしないおおらかというか、破天荒なキャラクターなのです。
猫を飼っている人はわかると思うのですが、ヒデヨシって、自分勝手、気まぐれ、好きなことしかしない・・・猫そのものの姿なんですね。
アタゴオルの物語は、連載される雑誌を転々としている為、追いかけきれなくなってしまったのですが、この映画は、『ギルドマ』という外伝の映画化だそうです。
あの緻密な世界を実写では映像化できないと思いましたが、3D-CGアニメの技術がやっとアタゴオルに近づいたのかな・・・と思いました。
絵がとても綺麗です。特に、海の青や森の緑。空気がとてもよく出ていたと思います。
冒頭、アタゴオルの祭りで始まって、それが米米CLUBの石井竜也猫が歌うのですが、ちょっとアタゴオルとは違う雰囲気かなーと思ったら紅マグロを抱えて暴走するヒデヨシ・・・・でアタゴオルの世界。
さて、ストーリー的にはヒデヨシが海の中から食べ物だと思った箱をこじあけたら、世界征服をたくらむ植物の女王ピレアの封印を解いてしまい、ヨネザアド大陸がピレアによって独裁されてしまうのを、ヒデヨシやテンプラやツキミ姫が、立ち向かうというストーリーで、「善と悪の戦い」のようなありがちストーリーかもしれませんが、やはりヒデヨシはなにがあってもヒデヨシで、女王ピレアなんてなーんとも思ってない、って所が良かったですね。
ピレアに対抗できるのは、植物の王なのですが、同時に封印と解かれ、ヒデヨシと出会い、ヒデヨシを「父上」に決めてしまう。
ヒデコと名づけた王は、ナスみたいな小さな姿なのですが、ヒデヨシはヒデコにとんでもないことばかり教えてあげちゃう。
勇士、ギルバトスではなく、王が選んだのはヒデヨシだった・・・というのが、良かったのか、悪かったのか・・・。
でもそのヒデコとのやりとりがかなり可笑しくてよかったです。
声が、ヒデヨシが山寺宏一さんで、軽妙な声の使い方うまかったし、ギルバトスの声の田辺誠一さんでクールな役にぴったりでしたね。
基本的にはアタゴオルの物語は長編ではなく、短編なので、その短編世界を上手くつないだ、戦いのないアタゴオルの不思議の世界をまたアニメで観たいと思います。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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