甘い泥

甘い泥

Sweet Mud

2007年10月23日 NHKBSにて

(2006年:イスラエル:97分:監督 チュロー・シャウル)

 これは、今年のNHKアジアフィルムフェスティバルの開催の前に、去年上映されたものを放映したものです。

 イスラエルとNHKの共同制作。

イスラエルには「キブツ」という、共同体制の村があります。

個々の家というものはあっても、子供たちは子供たちだけで暮らし、大人は全ての子供の親という体制。

仕事も学校も、村で共同で行って・・・という平等と共同をめざした共同体なのです。

 しかし、平等・・・といっても、個々の子供の面倒を見るのは、大勢の大人、では無理がある。

この映画は、そんな「夢の共同体」の崩壊を描いています。

 主人公は13才のドヴィルという男の子。

父は死別して、母は、スイスのお金持を恋人にしている・・・のですが、手紙のやりとりだけなのです。

しかし、どうも、母は共同体から、はずれている。周りは広々とした草原なのですが、なんとも息苦しいという対比のさせ方が上手いです。

少年は、だんだん、精神的に疲労していく母を、助けようとするけれど、そんな気持を「村の共同体」が阻止するのです。

 そして、母は息子に「ここから出て行きなさい」とはっきり言う。

皆で仲良くだけでは、やっていけない・・・共同生活の息苦しさを、息子には経験させたくない、という母の叫び。

 わたしは、学校や仕事で何かしらの形で「共同体」だと、家ではひとり・・・という時間も欲しいのですが、共同体は、そんなプライバシーは黙殺されてしまう恐ろしさを、静かに描いていました。

村から出て行くのには、少年の兄のように軍隊に入るしかないのか・・・映画は、風が吹き渡る草原を少年が、仲良くなった少女と自転車で、村から走り出るところで終わっています。

その後どうなったか、までは描きません。

 ひとりの少年から見た、いつも、どこにでもある村意識。

皆で共同のようで、なんとなく人々は、孤独そうに見える。枠組をはずすことができないならば、出ていくか、あきらめるか、どちらかを選択しなければならない厳しさを、よく出している映画でした。

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