北京の恋 四郎探母

北京の恋 四郎探母

秋雨 Autumuly Rain

2007年11月14日 銀座シネパトスにて

(2004年:中国:98分:監督 スン・ティンエ)

 中国映画とはいえ、主人公は日本人の女の子です。

梔子(しこ)(前田知恵)は、中国語を勉強し、京劇が好きで、習いたいあまり中国に渡ります。

パソコンのチャットで、「橘社長」と名乗って、中国の京劇関係者とコンタクトをとっていたのです。

しかし、「橘社長」を出迎えた、過去の京劇名優、力何は、駅で会ったのが「20才くらいの若い女の子」でびっくりしてしまう。

しかも、京劇を教えて下さい・・・なんて言うのにあきれてしまうのです。

 丁度その時、京劇を離れていた力何の息子、鳴が、また京劇をやりたい・・・と家に戻ってくる。

日本人の若い女の子は押しかけてくるわ、勘当したはずの息子が戻ってくるわ・・・でなにかとあわただしくなってしまうのですが、力何は、鷹揚で、受け入れる。

 そして、若い鳴と梔子は、恋をするようになる。

しかし、鳴と梔子の祖父母は実は、戦争の時、不運な立場の2人だったことから、関係は難しくなってしまうのでした。

 このタイトルになっている「四郎探母」は、京劇の演目のひとつ。

宋時代、王家の四男だった四郎が、捕虜になり・・・母と弟と離れてしまい、身分を隠して結婚するけれど、やはり母と弟に会いに行く・・・という物語です。

 前田知恵さんという人は、外国人で初めて、中国芸術学院を卒業した人だそうで、中国語が上手いのですが、京劇になると・・・

そこら辺の、京劇の厳しさとか、京劇の世界というのは、ちょっと上手くいきすぎかな、、、と。

日本の歌舞伎ぐらい伝統がある京劇を、そんなにすぐに身につけられるはずがないけれど、まぁ、映画の中では、舞台に立つまでになるのでした。

 「日本人なのか?パスポート見せろよ」と言われて「見せるわよ」というと、「わかった、自分が日本人だなんていう中国人はいないからな。

あんたは日本人だ」といったやりとりからわかる若い人にもある日中の壁。

 しかし、日中戦争の事になると、それぞれの祖父の立場は微妙に違います。

捕虜になった鳴の祖父。それを捕まえた軍曹の梔子の祖父。

日本軍人にも、戸惑いや悩みがあった、という描き方は、とにかく日本人は鬼です、という単一的な描き方はしていません。

 日本人なんか大嫌いなんだよな、と最初は言い放つ鳴ですが、梔子は、何も知らないから、きょとんとしている。

しかし、だんだん、祖父が自分が中国でしてきたことに、いまだに苦しんでいる・・・という事実も知ることになる。

父である力何も、文革時代に日本に対して苦しい思いをしたうえに、女形として一番大事な声(ものすごく高い声)をつぶされた・・・京劇役者をあきらめた悔しさもありますが、あまりそういう事を責めたりはしません。

 むしろ若い鳴の方が拒絶反応がひどい。

でも、昔のことを忘れてはいけないけれど、今時の若者は仲良くせなあかんよ・・・・という風に、じわじわと話は展開していき、さっと幕を引くようなラストがとても良かったですね。 

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